「silent」で話題の"手話"ドラマや映画での描き方 映画「ケイコ」等聴覚障害者を扱う話題作も続々

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特に日常生活について細かく聞いてきて、「昔、屋内信号装置という音を光や振動に変える機械がなかった頃に、私が炊飯器用のタイマーに扇風機をつけて目覚まし時計代わりにしていた」という話をしたらそのシーンが実際に映画に使われていてびっくりしました(笑)。

後ろから来る自転車に気がつかないとか、後ろから声で怒られても気がつかないなど、いろいろ話した内容が作品のあちこちで自然に描かれています。あまりにも自然すぎて聞こえない人が困っているところと気がついてもらえないだろうと思うシーンもいくつかありますね。

アナウンスが聞こえないところとか。でもそれが作品に深みを与えていると私は思います。流しの水が漏れているのに水音が聞こえなくて気がつかないのは私も洗面所などでしょっちゅうやっていて、水道代がかかります(笑)。

聴覚障害者
映画『ケイコ 目を澄ませて』の1シーン(配給提供: ©2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS)

聞こえない主人公が主役の作品も多数

――近年は手話を題材とした作品が次々と発表され、手話に注目が集まるようになったと思います。周囲の方の理解なども含めて、風向きの変化を感じるところはありますか?

確かに注目される作品が次々と上映、放送されていますし、映画やドラマだけでなく、私が監修した『聲の形』や『王様ランキング』のようにアニメでも聞こえない主人公が活躍しています。

そういうのが増えた背景には多様化社会、いわゆるダイバーシティが進んできたということがあります。それを推進した1つとしてオリンピック・パラリンピックが開催されるということで海外の方を迎えるための意識というのがあると思っています。

その流れに乗って情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法や東京都手話言語条例が制定されています。また、東京都の施策としてもエレベーターやノンステップバスなどのハード中心だったことが、情報提供や理解推進などのソフト面も重きをおくようになっています。

その中で手話が注目を浴びているのはインターネットを中心とした情報化社会が静止画から動画に移行したことが大きく影響しているんじゃないかなと思います。動画中心になったことで動きのある手話を見る機会が増えたからではないでしょうか。

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