「silent」で話題の"手話"ドラマや映画での描き方 映画「ケイコ」等聴覚障害者を扱う話題作も続々

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昔、『星の金貨』や『愛していると言ってくれ』などの監修や手話指導をしたときはここまで幅広くの方が観ているという感じではなかったので、昔よりも今のほうがマスメディアの影響力が大きくなっているのかなと思いますが、その中でも人気番組ということで注目度も高く、より多くの方が手話や聴覚障害者について関心を持ってくださったことは、ほかの障害者と比べて気がついてもらいにくい私たち聴覚障害者にとって大変ありがたいことと思います。

――これまで多くの手話描写を監修してきた越智さんですが、まだまだ理解されていないなと思うポイントはありますか?

タイトなスケジュールや役者さんが多忙で十分に練習できないなどで思っていたような手話になっていないということがよくありました。

最初のころは撮影した手話モデルを見て練習してもらい、撮影前に1~2回直接手話を指導しておかしなところを直し、撮影はタッチしないという感じだったのですが、撮影したものを一応チェックしたところ、後ろから声をかけたら振り向くという聴覚障害者ならありえないシーンとかがあったり、手話のつながりかたがおかしいなどがあったりしたので、今では撮影現場でも当事者スタッフを派遣してチェックしています。

それでも事前に検証した個性に合わせた手話表現にはならないことが多かったですね。

映画『ケイコ』の製作過程

――そんな中、『ケイコ』の制作陣は熱心に手話について理解しようとしていたそうですが。

手話というよりは聴覚障害者についてですね。こういう監修依頼のとき、まず聴覚障害者の特徴についてレクチャーするのですが、ろう教育の影響で文章を間違える方が多いことや、ろう文化のこと、同じ聴覚障害程度でもまったく違うことがあるなど、ほとんどの方が今まで聞いたこともない内容なので、戸惑ったりなかなか理解できなかったりすることが多かったです。

聴覚障害者
映画『ケイコ 目を澄ませて』の1シーン (配給提供:©2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS)

でも『ケイコ』のスタッフはもっと詳しく知りたいといろいろ聞いてきました。「文章が苦手な方が多いとのことですが、具体的な文章例を見せていただけませんか」とまで聞いてきて、文章がちょっと苦手なろう者が書いた報告文とそれを私が手直しした報告文の両方を提供したりしました。

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