「宮沢賢治」が生前ほとんど評価されなかった背景 堀辰雄の小説『風立ちぬ』についても解説

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今回は宮沢賢治と堀辰雄の名著を読み解きます(写真:わたほこり/PIXTA)
樋口一葉や森鷗外、夏目漱石、宮沢賢治、三島由紀夫など、「日本近代文学の名著」と呼ばれる作品を国語の授業などで覚えたけど、実際に読んだことはないという方、意外と多いのではないでしょうか? 名作をどのように読めばいいのかーー。劇作家・演出家の平田オリザさんの新著『名著入門 日本近代文学50選』より一部抜粋し再構成のうえ、そのヒントをお届けします。本稿では宮沢賢治と堀辰雄についてお届けします。

生前はほとんど評価されなかった「宮沢賢治」

『銀河鉄道の夜』(新潮文庫)
宮沢賢治 みやざわ・けんじ(1896〜1933)
1人の少年の成長物語                
『銀河鉄道の夜』

私の名前「オリザ」はラテン語で「稲」という意味で、戦中派の父が、どうか息子は食いっぱぐれがないようにと、宮沢賢治の『グスコーブドリの伝記』からとってきたらしい。

宮沢賢治は1896年、明治三陸大津波の年に岩手県花巻に生まれ、1933年、昭和の三陸大津波の年に37歳の若さで亡くなった。生前はほとんど評価はされず、没後、草野心平、高村光太郎らの尽力によって遺稿の出版が相次ぎ急速に知名度を高めた。

そのような経緯もあって、宮沢賢治の作品群は、死後に多くの原稿が発見され、そのたびに改訂作業が行われ新版が発刊されることになった。もちろん賢治自身が、1つの作品について繰り返し膨大な量の推敲を行ってきたことも影響している。

『銀河鉄道の夜』も1924年に着想、執筆。その後も推敲、改訂が繰り返され、現在流布しているストーリーは、戦後もしばらくして発見された第4次稿と呼ばれる作品である。

よく知られるように本作は、ジョバンニとカムパネルラという2人の少年が、銀河鉄道に乗って宇宙を旅するという筋書きだ。そして結末、すでにカムパネルラは川で溺れそうになった友人を助けようとして亡くなっていたことが明らかになる。

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