35歳でこの世を去った「芥川龍之介」時代の混迷 「心境小説分野」を確立した志賀直哉も解説

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国語の授業などで覚えた日本近代文学の名著たち。けれど、実際に読んだことはないという方は意外と多いのではないでしょうか(写真:髙橋義雄/PIXTA)
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樋口一葉や森鷗外、夏目漱石、宮沢賢治、三島由紀夫など、「日本近代文学の名著」と呼ばれる作品を国語の授業などで覚えたけど、実際に読んだことはないという方、意外と多いのではないでしょうか? 名作をどのように読めばいいのか――。劇作家・演出家の平田オリザさんの新著『名著入門 日本近代文学50選』より一部抜粋し再構成のうえ、そのヒントをお届けします。本稿では日本文学に「短編小説」のジャンルを確立した芥川龍之介と心境小説と呼ばれる分野を確立した志賀直哉についてお届けします。

エリートの道を歩んだ「芥川龍之介」

『河童』(新潮文庫)
芥川龍之介 あくたがわ・りゅうのすけ(1892〜1927)
日本文学に「短編小説」のジャンルを確立             
『河童』

陸上の100メートル走で、誰か一人が10秒を切ると相次いで記録の壁が打ち破られていったように、20世紀初頭、漱石、藤村らによって完成された言文一致体は、1910年代にはすべての若い文学者が当たり前のように使いこなすものとなった。日本の近代文学は急速な発展を遂げ、ほぼ現代に至るまでの基礎が、この時代に形成される。

その代表格は今も芥川賞に名前を残す芥川龍之介だろう。芥川はまた、日本文学に「短編小説」というジャンルを確立した。

旧制一高から東京帝国大学と超エリートの道を歩んだ芥川は、すでに20代前半で代表作となる『羅生門』(1915年)『鼻』(1916年)といった名作を書き、大正の文壇をリードする存在となった。出自も経歴も(そして、その抱える苦悩も)似ている夏目漱石に師事し、世間からもその後継者と目された。

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