世界唯一"四角いうんち"する「ウォンバット」の謎 モフモフ毛皮とつぶらな瞳の可愛すぎる生態
しかし、うまく穴に逃げ込めたとしても安全とは言えないのがこの厳しい自然界。ネコやキツネやフクロネコのような小型の肉食獣であれば巣穴の中に侵入でき、そうなれば大人は襲われずに済んだとしても、体の小さな子ウォンバットは捕食の対象になってしまいます。
そこでそんな天敵からの襲撃に立ち向かうために辿り着いた彼らの進化こそが「鋼鉄のお尻」です。
「え? 鋼鉄のお尻?」と思ったそこのあなた。まぁ聞いてください。ウォンバットのお尻は厚さ6㎝にもなる組織で覆われており、これが尋常じゃなく硬くて頑丈。天敵に遭遇したウォンバットは最寄りの巣穴に逃げ込み、その頑丈なお尻で巣穴の入り口に蓋をします。
このお尻にはあまり神経が通っておらず、肉食獣に噛まれたとしてもそれほど痛くないようです。動物界最強の顎を持つと言われるタスマニアデビルの歯さえ通さないそのお尻を目の前に、たいていの肉食獣は狩りを諦め去っていきます。
なぜ、「四角いうんち」をするのか?
そしてもう一つ、最大の“謎”が、彼らのうんちです。
オーストラリア南東部のユーカリやアカシアが原生する湿った森の中を歩いていると、大きさ2〜3㎝の黒っぽい立方体が地面に無数に転がるのを見かけます。この小さな茶色のサイコロが岩の上に丁寧に置かれていることも多々あります。
初めてウォンバットの立方体のフンが正式に国際的に知られたのは1960年に当時のタスマニア大学動物学の研究者であるエリック・ガイラー(Eric Guiler)博士が論文として発表した時です。
……ウォンバットのうんちは、なぜ四角いのか。
この謎は科学者のみならず世界中で多くの人を長年困惑させ、そして魅了してきました。自然界でこれほどまでに完璧な立方体は他に例がなく、この四角いうんちは世界でウォンバットのみが作り出せる奇跡の物体。
その目的もメカニズムも謎に包まれていました。肛門が四角いのか、恥骨の形状のせいなのか、はたまた丸いフンをわざわざ手で四角くしているのか。そんな臆測さえ飛び交いました。しかし、四角いフンなど研究しても実用性が低く、ウォンバット保全の役にもあまり立たないのではないかと、近年まで研究されてこなかったのです。
ウォンバットは、この立方体のフンを1日に80〜100個ほど、基本的に巣穴内ではなく地上で排出します。
彼らの主食である草や根っこは栄養価が低く、そこからできるだけ多くの水分と養分を抽出して吸収するため、6〜9mにもなる長い腸で最長で14日間もかけてゆっくりと消化されます。そのため、彼らのフンは基本的に非常に乾いています。体長1.6mほどの人間の腸が約7mであることを考えると、体長比を含めてその長さがお分かりいただけるでしょう。
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