世界唯一"四角いうんち"する「ウォンバット」の謎 モフモフ毛皮とつぶらな瞳の可愛すぎる生態

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ある日は泥んこになりながらウォンバットを追いかけ、ある日は複数のウォンバットを一度に抱っこしたり、またある日は病気に罹ったウォンバットの治療をする。そんな波瀾万丈(というより、ウォンバットまみれ)な研究生活を通して得た知識や経験を皆さんと共有し、ウォンバットという不思議な生物の生態、魅力について、知っていただこうと思います。

3種類いるウォンバットのうち、特に多く見られるのがヒメウォンバット。大人の体長は最大約1m、体重は大きいもので30㎏を超えます。そのずんぐりむっくりなビジュアルのせいで大きめのモルモットぐらいだと思っている方も多いと思うのですが、実際近くで見てみるとかなり迫力のある大きさです。

意外と知られていないのですが、ウォンバットは穴を掘る地球上最大の生物でもあります。その鋭い爪と強靭な脚を使って作る巣穴は長さ20〜30mにもなり、僕らの家と同じように寝室、トイレ、台所などなど用途に合わせたお部屋が用意されているのです。

ウォンバットの巣穴
草原の中に現れる巣穴の入口(写真:筆者提供)

敵から身を守る「鋼鉄のお尻」

この「穴を掘る」という行動、彼らにとってはめちゃくちゃ大事で、穴の掘り方を知らないウォンバットは野生の環境では生きていけません。なぜなのか、その理由の1つについて、僕がタスマニア大学で行った、ウォンバットの巣穴の温度に関する研究により明らかになりました。

ウォンバットの巣穴の中の温度は1年中ほぼ一定で、外の気温が雪の降る極寒の氷点下になろうと、真夏の炎天下で40℃になろうと、だいたい15〜20℃ぐらいに保たれています。ウォンバットは代謝が非常に低く、体温調節が苦手で、特に暑いところでは体力を消耗しがちです。ですので、昼間の暑い時間帯は巣穴内に作った干し草の敷き詰めてある寝室で眠り、夜の比較的涼しい時間帯になるのを待ちます。

そんな暑がりの彼らなので、夏場は最大で1日19時間ほどを寝て過ごします。この低い代謝のおかげで、エネルギーを消費しにくいため、気候が悪い時にまで無理して食事をする必要がないのです。

このウォンバットの巣穴、実はもしもの災害対策も備えてあるんです。たとえば、巣穴内にいくつもの段差があるため雨が降っても水が巣の奥の方まで入ってこない仕組みになっています。天気の悪い日は雨が止むまで台所に蓄えておいた草でも食べながらむにゃむにゃしてればいいのです。あんなに不器用そうなのに意外と賢い!

基本的に天敵の少ないウォンバットですが、たとえもしキツネやディンゴ(オーストラリア本土に生息するイヌ科の動物)などに出くわしても大丈夫。見た目に反して彼らは素早いのです! 短距離であれば時速40㎞ほど、つまりウサイン・ボルト並みの瞬足で、あっと言う前に近場の穴に逃げ込んでしまえば、捕食者の手から逃がれるのはさほど難しくないでしょう。

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