世界唯一"四角いうんち"する「ウォンバット」の謎 モフモフ毛皮とつぶらな瞳の可愛すぎる生態

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普通、動物のフンというのは丸っこいかチューブ状のものがほとんど。しかし、フンを表札として使い、他の個体とコミュニケーションを取るウォンバットたちにとって普通の丸いフンでは都合が悪く、サイコロ型にしたくなる理由があったのです。

もし仮に丸いフンをしていたとしたら――天候の変化が激しいオーストラリア。風が吹いたり、雨が降ったりしたら、どうなるでしょうか?

おそらく、せっかく玄関の前に設置したフンもきっとどこかへコロコロと転がっていってしまいます。それを防ぎ、同じ場所に長時間フンを留まらせるのに、サイコロ型のフンは最高に役立つのです。

実際にウォンバットのフンの模型と通常の丸型のフンの模型を8度の傾斜に落下させ、移動距離を比較したところ、立方体のウォンバットのフンは丸型より平均して20㎝も落下位置に近い位置で留まることが証明されました。

この性質を利用して、ウォンバットのフンは岩の上や切り株の上など、少し高くなっているところに設置してあることも多くあります。

ウォンバットの親子
ウォンバットたちは過酷な自然環境の中で生活している(写真:筆者提供)

「ウォンバットのうんち」は人々を笑わせ、考えさせた

このように高い位置にマーキングをする習性は他の哺乳類にも多く見られます。それは高いところにフンがあることでより広範囲に臭いを届けることができるし、視覚的にも目立ちやすくなる、という利点があるためです。

「いや縄張りをアピールするにももっとマシな方法があったんじゃ……」と思ってしまったそこのあなた! 僕もまったく同じ気持ちです。でも、効率だけがすべてじゃない。

ウォンバットのうんちはなぜ、四角いのか?
『ウォンバットのうんちはなぜ、四角いのか?』(晶文社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

ウォンバットの立方体のフンについてのこの研究は、2019年に「人々を笑わせ、そして考えさせる業績」に送られる賞、イグノーベル賞を受賞。イギリスで行われた授賞式では、ウォンバットの着ぐるみを被ったスコットが壇上に現れ、会場を湧かせました。

また、2021年にはこの研究の論文が、「腸の剛性の非均一性が形成するウォンバットのフンの角(Intestines of non-uniform stiffness mold the corners of wombat feces)(Yang et al., 2021)」というタイトルで発表されました。

傍から見たら不器用に見えるこんな生態も、ウォンバットの魅力なのではないでしょうか。

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高野 光太郎 ウォンバット研究者

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たかの こうたろう / Kotaro Takano

ウォンバットを愛し、またウォンバットに愛されたウォンバット研究者。 愛知県出身。2012年に日本の高校を卒業後、タスマニア大学理学部動物学 科・同大学院生物化学修士課程修了。 メルボルンでの就労経験を経て、現在はサンシャインコースト大学健康• 行動科学部でさらなるウォンバットの研究に携わる。

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