世界唯一"四角いうんち"する「ウォンバット」の謎 モフモフ毛皮とつぶらな瞳の可愛すぎる生態

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その闘いがしばらく続いたある日、ウォンバットの腸壁の硬さが場所によって違うことが判明します。そこから道が一気に開け、謎が解き明かされました。

この不規則な作りの腸が消化のために蠕動運動を繰り返すことで、食物は水分を失いながら腸内を移動していき、腸壁の硬くて厚い箇所と薄くて柔らかい箇所を交互に通過していきます。すると、便に角と面が形成されていくではありませんか。

しかも水分が極限まで吸収され、乾燥した状態になった便は、その立方体の形状を維持しやすくなり、そのまま体外へと排出されるという実験結果が出たのです。丸い肛門から四角いフンが出る奇跡が解明された瞬間でした。

というわけで、ウォンバットの体内で立方体のフンが作られる仕組みが解明されたのです!

ウォンバット
熟睡中のウォンバット(写真:筆者提供)

何のために「四角いうんち」をしているのか?

しかし、いったいなぜ、何のために、ウォンバットたちは立方体のフンをするのか。さらなる生態観察の結果、それが、彼らが単独行動をする生き物であることと関連していることが分かりました。

本来単独行動をする動物は、自分の縄張りに他の個体が侵入するのを防ぐために周りに尿や体臭でマーキングをして存在をアピールします。ウォンバットにとっては、その立方体のフンがそうした自分の存在をアピールするためのマーキング目的を持つものだった、と考えられています。

とはいえ、ウォンバットの縄張り意識は弱く、個体密度の多い地域では、夕方になると草原が無数のウォンバットで覆われる地域もあります。そんな縄張り意識がユルユルのウォンバットですが、彼らも決して誰にも踏み込まれたくない領域を隠し持っています。

それが巣穴です。

ウォンバットの中でも、とりわけ「ヒメウォンバット」は巣穴内に別の個体がいることを嫌い、侵入者が現れれば追い出し、すでに誰かがいる場合は基本的には退散し、他の巣穴を探します。

このように、人付き合いならぬ、ウォンバット付き合いが非常に苦手な彼らはその立方体を巣穴の入り口などに設置して「ここは僕の巣穴なので他のウォンバットは立ち入らないでください」と表札のようにして使っていたのです。

視力が決して良くないウォンバットたちは、そのフンを使った嗅覚への働きかけで他の個体とコミュニケーションを取り、自分のテリトリーを主張するようになったというわけです。そして、その際にこのあまりにも独特なフンの形状が役に立つのです。

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