「子どもの不登校」親がやっていいことダメなこと 「学校に行きたくない」と言ったらまず休ませて

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子どもは、親が思っている以上に親の顔色をよく見ているものです。「私はこのフリースクールがいちばんいいと思っているけど、お母さんは喜ぶかな」というぐあいに、親が自分の選択を支持してくれるか、つねに気にかけているものです。

親は、子どもの将来に気が向いてしまい、「厳しく指導してくれる場所のほうがいいのかな」と、いまの子どもの状態を考えずに進路を選択しがちです。子どもの将来ばかりを案じてしまうと、かえって子どもを追い詰めてしまうことにつながりかねません。

子どもに対する心配のベクトルを「未来」から「いま」、つまり「学力」から「笑顔」に変えてあげると、子どもは自然とケアされ、自分のことを大事にできるようになります。ですから、どの居場所を選ぶにしても、子どもが「いま笑顔かどうか」をたいせつにしてほしいと思います。

「学校以外にも子どもの居場所はある」と考えるといい

「学校に行かない」という決断は、親はもちろん、子ども自身も簡単にできることではありません。周囲からはなかなか見えませんが、子どもは深く傷ついている状態にあります。ですから、子どもが「学校に行きたくない」と言ったときの対応は、その後の人生を考えても、とても重要になることを忘れないでください。

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心のケアを含めて、子どもが「生きていてよかった」と思えるような環境を整備することができたら、子どもは不登校の経験を糧に、将来大きく飛躍することだってできます。

新著の目的は「絶対に学校に通わせなければいけない」と考えている親の意識を少しでも変えることにあります。「なぜうちの子どもは学校に行けないんだろう」「どうしたら学校に行ってくれるんだろう」という意識を、「学校以外にも子どもの居場所はある」と転換することで、事態が好転するケースをこれまでたくさん見てきました。

フリースクールやオルタナティブスクール、教育支援センター、放課後登校、ホームスクーリング、塾、実は、選択肢は学校以外にもたくさんあるのです。

子どもが不登校になり、あせる気持ちはよくわかりますが、ここは子どものためにも、一度肩の力を抜いて「学校以外の選択肢がたくさんある」という事実を認識してください。

また、不登校を経験した子どもの大多数が、その後の人生では社会人として働いていることも事実ですから、子どもの将来を案じてパニックになるよりも、まずは目の前の子どもの「笑顔」を最優先に考えてほしいと思います。子どもの「現在の幸せ」が、「将来の幸せ」にダイレクトにつながるという事実を、私は確信を持ってお伝えすることができます。

石井 志昂 『不登校新聞』編集長

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いしい しこう / Shiko Ishii

1982年東京都生まれ。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、教員、校則、いじめなどにより中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳から日本で唯一の不登校の専門紙である『不登校新聞』のスタッフとなり2006年から編集長、2020年からは代表理事も務める。これまで不登校の子どもや若者、親など400人以上に取材し、女優・樹木希林氏や社会学者・小熊英二氏など幅広いジャンルの識者に不登校をテーマに取材を重ねる。「あさイチ」「逆転人生」(NHK)「スッキリ」(日本テレビ)「報道特集」(TBS)などメディア出演多数。不登校新聞社が編著書として関わった書籍に『学校に行きたくない君へ』(ポプラ社)などがある。

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