身寄りのない「単身高齢者」が陥る社会的孤立 身元保証や死後の手続きを誰が担うのか

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第3に、経済的な厳しさに社会的孤立が加わると、生活困窮が一層深刻になる点だ。生活困窮が深刻化する前に支援につながれば、早期に生活再建を行える事例も少なくない。孤立しているとSOSを出す相手がおらず、深刻な状況に陥りがちである。

今後も未婚化の進展に伴い、中高年や高齢者で身寄りのない人が一層増えていくことだろう。未婚の単身者は、配偶者だけでなく子どももいないので、家族に頼ることが難しい。しかし、友人・知人などとのつながりを保っていけば、孤立を防ぐことはできる。

また、社会に求められるのは、「家族機能の社会化」である。家族機能には、生活支援、身元保証、死後事務などの手段的サポートと、たわいもない話をしたり、一緒に喜んだり悲しんだりする情緒的サポートがある。

前者の手段的サポートについては、すでにいくつかの地域で、地域のさまざまな関係団体が集まって、身寄りのない人を支えていくガイドラインを作る動きが始まっている。

また、情緒的サポートについては、身寄りのない人同士や、身寄りのない人と地域住民が支え合う「互助会」をつくる地域もある。こうした取り組みが、各地で少しずつ始まっている。

「伴走型支援」が有効

さらに、孤立者を支援する現場からは、つながり続けることを目的にした「伴走型支援」が有効との指摘がある。長期的に孤立して自己肯定感が低下している人は、自らの課題が見えないことも多い。このため、課題解決を目的にした従来の支援だけでは対応が難しい。

継続的につながり、時間をかける中で、本人が自分の課題や長所を認識し、周囲との関係を築いていく。その中で、別の展開が始まることもある。自己認識のためにも、「他者」という鏡が必要になるのだろう。政府には、こうした長期的につながり続ける支援への財政的な後押しを期待したい。

現代社会は「経済的な貧困」のみならず、「関係性の貧困」も大きな課題になっている。家族に頼ってきた機能を社会化することは、社会や地域のあり方を見直して、地域におけるつながりを再構築するきっかけになるかもしれない。

藤森 克彦 日本福祉大学福祉経営学部教授・みずほリサーチ&テクノロジーズ主席研究員

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ふじもり・かつひこ

1965年生まれ。長野県出身。国際基督教大学教養学部卒業。同大学大学院行政学研究科修士課程修了。日本福祉大学にて博士号(社会福祉学)取得。2017年から現職。みずほリサーチ&テクノロジーズ主席研究員も務める。専門は社会保障政策。著書に『単身急増社会の希望』など。

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