子がいない「中高年単身女性」の知られざる貧困 女性活躍の陰に埋もれ、声すら上げられない

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コロナ禍による影響を最も受けたのは非正規で働く女性たちだ。2020年は雇用者が前年比で65万人減っている(男性非正規は32万人減)。コロナ禍は飲食、小売り、宿泊など非正規女性が働く比率の高い職場を直撃した。

最も深刻な状況に追い込まれたのがシングルマザーである。政府は困窮する子育て世帯を対象とする現金給付を実施。「まだまだ不十分」という声も多いが、ひとり親世帯の貧困は可視化され、政治の重要課題の1つとして位置づけられるようになってきている。

一方、子どもがいない単身女性は支援の対象外であり、その実態は見えないままだ。

「彼女がなぜ?」という衝撃

2020年11月、ショッキングな事件が起こった。東京都渋谷区幡ヶ谷のバス停でホームレス女性が殺害されたのだ。64歳の単身女性でコロナ禍以前は試食販売員として働いていた。劇団に所属していた若い頃の写真が公開されると「普通の女性だった彼女がなぜ?」という衝撃が広がった。また「なぜ助けを求めなかったのか?」という疑問も投げかけられた。

だが、助けを求めたとして支援につながることができただろうか。

コロナ禍で仕事と住まいを失った後、1カ月ほど路上をさまよったという40代の単身女性に出会った。彼女は役所へ相談に訪れているが、生活保護を受けるには今いる神奈川県から住民票がある関西へ行く必要があると申請を断られている。生活保護申請に住民票は不要で、現住地で申請できるのだが、家も所持金さえない女性に悪質な対応が行われる場合もある。

女性であれば婦人保護施設やシェルターを利用できるのではと思う人がいるかもしれないが、こうした施設は配偶者から暴力を受けた人が優先だ。経済的理由などで家を出た単身女性が利用できるかどうかは自治体によって異なる。

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