意外に知られていないが、全世代で最も貧困率が高いのは65歳以上の高齢単身女性である。単身女性の貧困率はコロナ禍以前から高く、20〜64歳で4人に1人が貧困、65歳以上では2人に1人が貧困という状態にまで跳ね上がる。年金だけでは生活できず、働かざるをえない人も少なくない。
就労率は年々高まっている。高齢者の労災事故申請は20年間で2倍にまで増加。2021年は労災死亡事故の4割以上が高齢者によるものだった。2022年2月、新潟県の菓子工場での火災事故で亡くなった6人のうち、4人が68〜73歳の女性だったことは記憶に新しい。女性たちは深夜勤で働くパート清掃員で、午前2時までベルトコンベヤーの清掃に当たっていたという。
埋まらない年金格差
高齢単身女性の貧困の背景には年金格差がある。単身とひとくくりにいっても、未婚か夫と死別か離別かといった違いや加入していた社会保険によっても状況は異なる。40年以上厚生年金に加入してきたのに受け取れる年金額が10万円に満たないという女性も多く、第3号被保険者として国民年金の保険料支払いを免除されてきた「夫と死別した専業主婦」よりも年金額が下回ることも少なくない。
背景には女性の賃金の低さがある。現在、労働者の4割が非正規雇用であり、うち7割を女性が占めている。非正規女性の8割以上が年収200万円未満であり、女性の賃金は男性の77%にとどまる。厚生年金には現役時代の賃金が反映されるため、賃金が低い女性の受け取れる年金が低額なのは当然ともいえる。
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