故郷に移住した「余命6カ月の男」に起きた重大変化 長寿の人が多い「ブルーゾーン」では何が起きるのか

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8年前にはじめて沖縄を訪れたときは、酸化ストレスを抑制する秘密の微量栄養素や、ウコンやヨモギのような昔からある薬用食品など、長寿の特効薬を探していた。それらを組み合わせてサプリメントにできないか。サルデーニャでは、動脈硬化を予防するポリフェノールの含有量が世界一のカンノナウ・ワインに興奮した。コスタリカでは、メソアメリカの「三種の神器」と呼ばれる、豆、カボチャ、トウモロコシが、ニコジャ半島の並外れた長寿の秘訣ではないかと考えた。

しかし、私の科学アドバイザーたちは、これらの食材だけでは長寿を説明できないと指摘した。時間が経つにつれて、私が探しているのは1つの独立した成分ではないことを受け入れるようになった。

なぜ、イカリア島の人々は長寿なのか?

島の北岸にあるエフディロスという町に着いた私は、副市長であり、島では数少ない医師でもあるイリアス・レリアディス博士に電話をかけた。この島の人々が非常に長生きしているという証拠があること、そしてその理由について何かヒントがないかと尋ねた。すると彼は、「君の研究には驚かないよ」と言った。彼はイカリア島の出身だが、アテネで学び、ヨーロッパを広く旅していた。

レリアディス博士は、ランガダ村を見下ろす週末の農家に私を招待してくれた。屋外のパティオで、レリアディス博士はテーブルにカラマタのオリーブ、フムス(ひよこ豆のペースト)、重いイカリアンパン、そしてワインを用意し、議論に入った。レリアディス博士は、イカリアの人々が長寿であることを説明するために、さまざまな可能性を列挙した。そのほとんどが、文化的な特異性に関係するものだった。

「ここでは夜更かしが多いんです」と、彼は言った。「遅く起きて、いつも昼寝をしている。午前11時までは誰も来ないから、オフィスも開けないんだ」彼はワインを一口飲んだ。

「ここではだれも腕時計をしていないことに気づいただろうか? 時計もちゃんと動いていない。だれかをランチに誘っても、来るのは午前10時かもしれないし、午後6時かもしれない。ここでは、単に時計を気にしないのだ」

「15キロ先にはサモス島があるんだよ」と、ラガダの遺跡の向こう、スモーキーブルーのエーゲ海の地平線上にある島を指差して彼は言った。

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