医師が指摘「腹筋がない人」は大腸がんに注意の訳 がんで手術をする人の腹筋は筋肉も筋膜も薄い

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全身を巡る体液には血液とリンパ液があります。血液は血管の中を流れ、リンパ液はリンパ管の中を流れます。血管と同様にリンパ管は全身に張り巡らされ、免疫系の維持および腸管での脂肪の吸収に重要な役割を果たします。リンパ管はリンパ球、樹状細胞などの免疫細胞や抗体などの免疫因子を運ぶ役割があります。リンパ管の途中にはリンパ節と呼ばれる結節状の組織が存在します。リンパ節は免疫細胞の貯蔵庫として働きます。

リンパの流れを早くし循環させる

血管とリンパ管の最大の違いは、血管は心臓がポンプとして血液を送り出すのに対して、リンパ管にはポンプが存在しないことです。静脈と同じく逆流防止の弁はついていますが、そのリンパ液を流すためには外力が必要です。呼吸の動きや皮膚の緊張、動脈の拍動、姿勢の変化などでもリンパ液は移動しますが、最大の外力は筋肉を動かすことです。リンパは平均分速20ml程度で流れていますが、運動時にはこの速度が10倍以上になります。

運動をすることにより筋肉が収縮しリンパ管を圧迫してリンパ液が急速に流れます。リンパ管は左右鎖骨の裏で血管に合流します。そのためリンパ管の中に存在した免疫細胞が急速に血管内に流入することになります。頻回に血液内を循環すれば、免疫細胞が感染ウイルスやがん細胞などの病原体を見つけやすくなります。

筋肉を強く収縮させることにより、筋肉は微小な損傷を受けます。筋肉から分泌されるミオカインは、この筋肉組織の修復を促すように免疫細胞にメッセージを送ります。筋肉細胞から放出されるミオカインで最も多い物質はインターロイキン6(IL-6)です。

IL-6は運動強度に比例して分泌量が増加し、炎症を抑えるサイトカインの産生を高めます。筋肉から放出されたIL-6は、筋肉を修復しながら内臓脂肪を減らす作用も発揮し、慢性炎症を抑える抗炎症効果を倍増させます。また骨の老化予防の効果や、動脈硬化を予防する効果も認めます。

このように筋トレの際に放出されるミオカインを通じて、筋肉は絶えず免疫細胞に話しかけて、無駄な炎症が起こらないように炎症をなだめてくれます。現在では筋肉によって誘導されるIL-6の抗炎症効果は、がんの進行を遅らせる効果も期待されています。

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