医師が指摘「腹筋がない人」は大腸がんに注意の訳 がんで手術をする人の腹筋は筋肉も筋膜も薄い

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免疫細胞の成長と十分な機能を発揮するためにはビタミンC、ビタミンD、亜鉛、セレン、鉄、タンパク質などの栄養素が必要です。加工食品ばかり食べるなど、これらの栄養が不足するような食事が長く続けば免疫機能は低下します。喫煙などの環境毒素や、慢性のストレス、慢性の睡眠不足、慢性感染症も免疫力を落とします。年齢が上がるにつれて免疫力は低下しますが、がんになる人はこれらの生活環境の乱れを放置している人が多いというのが事実です。

これらの生活環境を改善することに努めれば、がんは予防可能な疾患であると全米1位の患者数を治療するMDアンダーソンキャンサーセンターからの論文にも記載されています。改善すべき生活習慣の中にはもちろん、「運動」を欠かさないということも含まれます。

筋トレが慢性炎症を改善しがんを予防する

筋トレをすることで得られる効果は全身の慢性炎症の改善です。筋肉は動かせば動かすほど筋肉からミオカイン(myokine)と呼ばれるサイトカイン(細胞間の伝達物質)を放出します。このミオカインには炎症を抑える物質が含まれており、筋トレを繰り返すことで全身の炎症が改善していきます。

がんは体の中に慢性炎症が持続することによって発生します。全身の炎症が起これば筋肉はどんどん退縮していきます。そのため僕がおなかの手術をした多くのがん患者さんの筋肉が萎縮していたのは、慢性炎症の結果だったのです。がんを予防するためには慢性炎症を改善することです。そのためにはまず、いい食習慣を形成することが重要です。しかしそれだけでは十分ではありません。筋トレをして筋肉自身から出る抗炎症物質を使って全身の炎症を改善することも併せて必要です。

イングランドとスコットランドの80306人を、平均9.2年経過観察して運動と死亡率の関係を見た研究があります。運動の種類はジョギングなどの有酸素運動と筋トレ、有酸素運動+筋トレ両方の3群で死亡率に影響を与えるかを検討しました。あらゆる原因での死亡に関しては、筋トレでも有酸素運動でも死亡率の低下を認めました。しかしがんによる死亡率だけを検討したところ、筋トレのみの群、筋トレ+有酸素運動の群は、がん死亡率の有意な低下を認めましたが、有酸素運動のみの人はがん死亡リスクの低下は認めませんでした。このことを理解してから、祖父も父もがんで亡くしたため、僕もいつかがんになるのではないかという漠然とした恐怖は消えていきました。食事に気をつけながら、毎日筋トレをすればがん予防ができるとイメージできたからです。

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