医師が指摘「腹筋がない人」は大腸がんに注意の訳 がんで手術をする人の腹筋は筋肉も筋膜も薄い

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現在、日本人100人当たり53.8人が生涯を通じてがんになると試算されています(日本がん治療学会ホームページより)。そして、日本人の死因の第1位はがんです。昭和56年に死因1位となって以降、がんによる死亡数は増加の一途をたどり、40年後の現在では2倍の年間33万人以上ががんで亡くなっています。

部位別に見ると、男性では前立腺がん、女性では乳がんで、それぞれのがん罹患者数1位となっています。男女ともに増加しているのは大腸がんです。この3つのがんはもともと日本人がなりやすいがんではなく、主に欧米人で多く認められているがんです。肉の摂取量は50年間で約10倍、脂肪は約3倍になり、野菜や果物を食べなくなってきた食生活が欧米型のがんの増加の主要因だと考えられています。

がんは別名で悪性腫瘍といわれますが、悪性=命に関わる状態を引き起こす、腫瘍のことです。腫瘍とは、正常な細胞とは異なる細胞が塊になっている状態です。がんは、周囲の正常細胞に比べて増殖が早いのが特徴です。細胞の分裂には多くのエネルギーを要しますので、がん細胞の増殖にエネルギーを使われてしまうと次第に正常な細胞へのエネルギー供給が少なくなっていくため、がんが進行するとやせて筋肉がなくなり元気がなくなります。

また悪性腫瘍が大きくなると、臓器が機能しなくなります。例えば肝臓の腫瘍が大きくなりすぎると、栄養の代謝や毒素の処理ができなくなりますし、がんに免疫細胞が動員されるために免疫の働きが低下して感染症にもかかりやすくなります。そのためがんの末期には、肝不全、呼吸不全、感染症を発症し命を落とすことになります。

がんの潜伏期間は10年以上、全米1位がんセンターが「がんは防げる」と明言

そもそも僕たちの体の中には毎日5000~10000個のがん細胞が出現しています。しかしそれらの細胞が増殖することはありません。未熟な細胞であるために自ら増殖がストップして細胞死する、または免疫細胞に処理されるためです。

検診で発見するためには少なくとも1cm程度の大きさになることが必要です。その大きさになるためには、10年から20年の年月を要します。免疫細胞がその能力を適切に発揮していれば、その細胞はことごとく壊され、がん細胞は増殖することはできません。がん細胞が免疫細胞の網の目をかいくぐって増殖したということは、10年から20年免疫機能が低下している状態が続いていたということになります。

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