未だ「イベルメクチンが効く」と考える人がいる訳 「根拠ないのになぜ?」に感染症専門家が答える

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さらに“新型コロナの治療に効く”という触れ込みだったはずのイベルメクチンが、今では“予防にもいい”とか“後遺症にも効く”と変わっていき、ついには“万能薬である”といった誤情報までインターネットで流れるほどだ。もちろん、根拠は一切ない。

日本でイベルメクチンの“信者”がここまで増えたのには、「日本人はファクトよりストーリーが好きといった要素もあるのではないか」と、岩田さんは推測する。

「イベルメクチンの開発に寄与したのは、日本のノーベル生理学・医学賞受賞者で、北里大学特別栄誉教授である大村智先生なんですね。そのため、世界中で流行している新型コロナを日本人が作った薬で治療できる……というストーリーに惹かれる人が多かったせいもあるのでは、と個人的には思います」

確かに楽しくない事実よりも、夢のような物語が好まれやすいという傾向はあるのかもしれない。だが、そこに医療を当てはめるのは問題ではないだろうか。

実は日本人のリテラシーは高い

一方で、科学的根拠に基づく医療、EBMという考え方は一般の人たちにも浸透してきていて、「日本人のリテラシーは向上していると思う」と、岩田さんは話す。

「他の先進国に比べると、日本は比較的、反ワクチンや反医療が広まっていないほうだと思います。新型コロナワクチンの接種率も、世界的に見て低くありません。インターネットで誤情報が広まるという面もありますが、正しい情報も伝わるようになってきています。インターネット上では一部の極端な人が可視化されて目立ちがちですが、多くの人はEBMに基づいた医療を受けられるようになっていますから、全体としては、日本では正しく情報を得ている傾向にあると思います」

神戸大学病院感染症内科・教授
岩田健太郎

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。ニューヨークで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時、またアフリカではエボラ出血熱の臨床を経験。帰国後は亀田総合病院に勤務。感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任する。著書に『「感染症パニック」を防げ! リスク・コミュニケーション入門』『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(以上が光文社新書)など著書多数。
大西 まお 編集者・ライター

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おおにし まお / Mao Onishi

出版社にて雑誌・PR誌・書籍の編集をしたのち、独立。現在は、WEB記事のライティングおよび編集、書籍の編集をしている。主な編集担当書は、森戸やすみ 著『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』、宋美玄 著『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK』、名取宏 著『「ニセ医学」に騙されないために』など。特に子育て、教育、医療、エッセイなどの分野に関心がある。

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