未だ「イベルメクチンが効く」と考える人がいる訳 「根拠ないのになぜ?」に感染症専門家が答える

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なぜ今もなお「新型コロナにイベルメクチンが効く」と考える人がいるのか。その背景について、専門家が考察します(写真/Bloomberg)

“新型コロナウイルス感染症に効果がない”ことが、科学的にも判明したイベルメクチン(商品名:ストロメクトール)。しかし、いまだに「イベルメクチンは新型コロナに効く」などと言い続ける医療従事者、そしてさまざまな方法でイベルメクチンを入手して飲んでいる人が一部には存在するのも事実だ。

なぜここまでイベルメクチンが注目されたのか。その背景や、飲み続けることによる問題について、感染症に詳しい神戸大学病院感染症内科・教授の岩田健太郎さんに聞いた。

新型コロナにイベルメクチンは効かない

2020年3月11日、WHO(世界保健機関)が新型コロナ(COVID-19)のパンデミックを宣言し、世界中に注意を呼びかけた。けれども感染がさらに拡大し、有効な治療薬は見つからなかったため、中南米や中東諸国を中心にイベルメクチンを治療に用いるようになった。当時、イベルメクチンは試験管レベルで新型コロナウイルスの増殖を抑えることがわかり、人への効果が期待されていたからだ。

その後、イベルメクチンは新型コロナに有効だとする論文が発表される一方で、それらの論文には問題点が見つかったり、また反対に効果がないという論文も報告されたりして、「いったいベルメイクチンは効くのか、効かないのか」と話題になった。

「新たな感染症が流行した際にはまだ治療薬がなく、治療法も確立されていないので、効果があるのではないかと既存の医薬品がいくつも候補に上がります。かつて不治の病とされていたHIV/エイズのときも、1980年代や1990年代はじめには、さまざまな医薬品が効くかもしれないと期待されていました。しかし、研究が進むにつれてほとんどが効果なし、と判定されたのです」(岩田さん)

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