今年9月26日には、イベルメクチンの治験(第Ⅲ相臨床試験)を行っていた医薬品メーカーの興和が、「新型コロナの治療薬としての有効性を確認できなかった」と発表。治験は昨年11月から今年8月にかけて行われたもので、日本とタイにいる新型コロナの軽症患者1030人を無作為の2つのグループに分け、イベルメクチンと偽薬(プラセボ)を、どちらかわからないように投与して効果を比較する二重盲検試験だったが、結局、臨床症状が改善傾向にいたるまでの時間などに統計的な有意差は認められなかった。
「海外はもちろん、日本の多くの医師や研究者も、ずいぶん前から新型コロナにイベルメクチンは効かないことをSNSなどで一般の方に伝えてきました。そもそも、イベルメクチンの製造元も効果があるとは言っていません」(岩田さん)
そうなのだ。イベルメクチンの製造元であるアメリカの大手医薬品メーカーのメルク自身も、2021年2月に「新型コロナウイルスへの治療効果について十分な科学的根拠はない」という声明を出している。それだけでなく、WHOも、FDA(米国食品医薬品局)も、EMA(欧州医薬品庁)もほぼ同じ見解であり、新型コロナの治療にイベルメクチンを使うことを推奨・許可していない。
イベルメクチンは寄生虫病の治療薬
本来、イベルメクチンは、マクロライド系の寄生虫の駆虫薬だ。糞線虫(ふんせんちゅう)と呼ばれる寄生虫が腸管に入り込むことで起こる「腸管糞線虫症」や、ヒゼンダニの寄生によって起こる皮膚炎「疥癬(かいせん)」などにはよく効く。当然ながら、サプリメントではなく医薬品であり、副作用がないわけではない。
「適切に使えば安全性の高い薬ですが、誤った使い方をすれば、頭痛や嘔吐、筋肉痛や関節痛、浮腫(むくみ)などの副作用が起こるリスクがあります。また薬剤に対する耐性がついてしまうこともあり、腸管糞線虫症や疥癬になったときにイベルメクチンが効かなくなる恐れも否定できません」(岩田さん)
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