さらに、こんな+αの取り組みも試してみたらどうだろう。1つは犬の散歩、もう1つはコーヒーを飲むこと、だ。
植木さんらはコロナ禍で血糖値がよくなった人・悪くなった人のパターンを調べている。その結果、悪くなった人は通勤がなくなってテレワークとなり、運動量が減った人、反対によくなった人は宴会などの外食が減って、自宅で食事を摂るようになった人だった。興味深いのは、テレワークに変わった人たちのなかでも血糖値がよくなったグループがいたということ。
「それは、犬を飼っている人のグループでした。糖尿病専門医の間ではよく知られた話なのですが、飼っていた犬が死んでしまうと、飼い主の患者さんの血糖値はとたんに高くなります。つまり、犬の散歩はかなり有効ということなんですね」(植木さん)
犬の散歩だけでなく、コーヒーも血糖値の改善につながる。
国立がん研究センターらが進めている多目的コホート研究(JPHC Study)が、今年4月に発表したのが、「非アルコール飲料の摂取と血糖値の指標との関連について」だ。
糖尿病ではない男性約4000人、女性約6000人を対象として、アンケート調査をしたところ、コーヒーの摂取量が多い人(1日あたり240ml以上摂取)は、飲んでいない人に比べて空腹時血糖値が低いという関連性が明らかになった。
この結果に対し、植木さんはこう見る。「これまでも、コーヒーを飲むと糖尿病の発症を抑えられるという研究結果がいくつも報告されています。カフェインが作用するのではないかという考えもありますが、ウーロン茶や紅茶など、ほかのカフェイン飲料では結果が出ていないので、別の仕組みが働いているのでしょう。今のところそこまではわかっていません」。
とはいえ、コーヒー嫌いでなかったらうまく生活に取り入れたいところだ。
毎日体重計や歩数計をチェック
最後になるが、今回紹介した食事と運動を継続したり、その効果を実感したりするために、ぜひ続けてもらいたいことがあると、植木さんは話す。
「それは“毎日体重計に乗ること”と“歩数計をチェックすること”です。体重は朝起きてトイレに行ったあと、これが1日のうちでいちばん体重が低い。日々の推移を見て増えたらちょっと気を付けようとか、考えるといいと思います。歩数計は今はスマホのアプリについていますので、それを活用しましょう。5000歩ぐらいは毎日歩いてほしいですね」
(取材・文/山内リカ)
この記事の前編:【血糖値】高めの人の体で起こっている怖い事象
植木浩二郎医師
1987年東京大学医学部卒業。ハーバード大学医学部Joslin糖尿病センターに留学。東京大学医学部附属病院特任教授など経て、2016年より現職。インスリンの作用メカニズムやインスリン分泌不全のメカニズムの研究、また糖尿病の大規模臨床研究などに関わる。日本糖尿病学会専門医・研修指導医。
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