従業員を「将来」で評価するのがどうも難しい事情 タレントマネジメントのはずが過去にとらわれる

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世界的には、GE(ゼネラル・エレクトリック)社での取り組みが有名である。

同社は、同社の企業バリュー(企業が従業員に期待する思考・行動様式)との合致度を縦軸にとり、今後期待できるパフォーマンス発揮度を横軸にとった「9Box」と呼ばれるマトリクスの中に従業員を位置づけたプログラムを展開していた(図1)。

GE社の9Box

(外部配信先では図などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

このプログラムでは、まず、対象者一人ひとりについて、これから3年や5年先のパフォーマンスはどの程度発揮が期待できるかを評価する。

3年や5年先のパフォーマンス発揮度をどのように予測するかというと、過去1~3年程度に実際に発揮されたパフォーマンスを参考にして将来発揮されるパフォーマンスを予測するのが一般的である。

ここでは仮に、ある従業員を3段階で評価した結果、そのうちの最も期待できるレベルに評価したとしよう。

9Boxの縦軸である「バリュー合致度」も同様の見方で評価する。

ここでも仮に3段階評価として、ある従業員を評価した結果、そのうちの最も期待できるレベルだったとしよう。

そうすると、先に評価したパフォーマンス発揮度の評価とバリュー合致度の評価がともに最高レベルなので、9Boxの最も右上にこの従業員の名前が書かれることになる(図1の①)。

9Boxの最も右上というのは、この従業員はこの会社の3年から5年先の将来を担うトップタレント、ということを意味する。

タレントマネジメントの進め方

会社はこの優秀な人材を会社につなぎとめ、より成長させるためのプランを検討する。

他社に引き抜かれない水準の給料を支払っているか、能力を伸ばすチャレンジングな仕事を与えているか、そろそろ昇格させてより大きな仕事を与えるべきではないか、次はどの部署でどのような仕事を与えるか、さらにスキルを伸ばすためにどのような研修を受講させるか、など検討事項は数多くある。

こうした議論の場には、所属する組織の長だけでなく、他部署の責任者も参加して、会社ぐるみでこれからの育成方針を決めていくのである。

ここに紹介した例は9Boxの最も右上に位置づけられた場合の例であるが、9Boxのそれぞれの枠にはそれぞれの定義づけがなされており、そうした定義づけに基づいて全従業員の今後のキャリアや育成計画の枠組みが決まっていくことになる。

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