例えば将来のパフォーマンスが期待できなくても会社のバリューに応じた行動が期待する程発揮されるようであれば、9Boxの最も左下ではなく、左の真ん中に位置づけられる(図1の⑦)。
この場合は、例えば部署を異動させるとか、研修機会を与えてパフォーマンスが発揮できる状態にすれば9Boxのど真ん中(図1の⑤)に移ることが可能となる。
また、仕事はマアマアできるけれど、会社のバリューに合致した行動がとれないという人がいるとする。この場合は、9Boxの真ん中下に位置づけられる(図1の⑧)。この場合は、繰り返し改善のための取組みを行って行動変容すれば、9Boxのど真ん中の位置(図1の⑤)に移る。
9Boxの最も左下は、パフォーマンスの評価とバリュー合致度の評価がともに最低レベルだった従業員の名前が書かれることになる(図1の⑨)。
ここに位置づけられた従業員は、会社から見て将来のパフォーマンスが期待できないだけでなく、会社が期待する考え方や行動もできない状態といえる。
残念ながらこの状態は、会社にとっても、本人にとっても、さらにはチームのメンバーにとっても不幸な状態といえるだろう。
そこで会社は本人と相談しながら、その人なりのパフォーマンスが発揮できるように社内でもっと簡単な仕事を与えるか、あるいは社外で活躍できる場を探したりする。
このように、タレントマネジメントというプログラムは、ツールを駆使しながら従業員1人ひとりの適性を見極め、今後のキャリアや育成の方向性を決めていくプログラムなのである。
タレントマネジメントの運用に見る矛盾
このような性質を持つタレントマネジメントプログラムであるが、本来のプログラム通りの運用が次第に崩れてきてしまうことがしばしば起こる。
それは、これまで見てきたように、本来は将来を見据えた従業員のキャリア形成やリーダーシップ開発に向けての取り組みなのだが、いつの間にか過去の実績ばかりを評価してしまうという矛盾に陥ってしまうのである。
こうなると、過去を評価するパフォーマンスマネジメントとの区別がつかなくなる。そして、従業員の潜在能力を見極めながら将来のキャリアを社内の主要メンバーで議論するという貴重な機会が無くなってしまう。これは企業の将来の持続的な成長に向けての議論が1つ無くなったことと同じである。
このプログロムを世間に広めたGE社でも、9Boxの⑨の位置に配置された従業員、いわゆるローパフォーマーを解雇対象とする取り組みに重点が置かれた結果、このプログラムが育成のしくみというよりは評価のしくみとして認識されはじめ、結果として同社は2016年にこの取り組みの廃止を余儀なくされたのである。
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