子宮頸がんワクチン「9年空白」が招いた重い代償 「積極的勧奨」を再開後も接種率は低いまま

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子宮頸がんワクチンを接種する女性
子宮頸がんを予防するためのHPVワクチンの「積極的勧奨」が再開された。しかし浸透に向けては課題が横たわっている(写真:共同)

9年の空白期間をどこまで取り戻せるのか。

毎年国内で1.1万人が罹患し、3000人近い女性が亡くなる子宮頸(けい)がん。厚生労働省は10月4日、その予防効果がある「シルガード9」というHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンを、2023年度の早期から公費で定期接種できるようにする方針を決めた。

子宮頸がんはほとんどの場合、HPVの感染が原因だ。HPVは性別に関係なく、性的接触によって多くの人が感染するもの。ほとんどは自然消滅していくが、一部の人でウイルスが消滅せずに感染が続き、がん化することがある。

罹患率は20代から上昇して40代でピークを迎える、比較的若い世代の女性に関わる病気だ。進行した場合は子宮の一部を切除することもあり、早産のリスクが高まる可能性がある。30代までの間で、子宮頸がん治療のために子宮を失う人は年間約1000人に上る。

これまで定期接種で使われてきたワクチンではHPVの感染を5~7割防ぐが、新たなワクチンは8~9割をカバーできるという。

一時7割まで上昇した接種率は1割台に

HPVワクチンの定期接種は、小学校6年生~高校1年生相当の女性が対象。政府は2021年11月、その対象者に予診票などを届ける「積極的勧奨」を約9年ぶりに再開した。今年4月からは、各自治体から対象者のいる家庭への通知を進めている。

しかし今年4月から7月までの接種率は、複数の都市を対象にした調査で約16%にとどまる。接種率が約8割に上るカナダやイギリス、オーストラリアなど他の先進国と比べると、日本は突出して低い。厚生労働省健康局予防接種担当参事官室の担当者は「徐々に上がっているが、決して高い水準とは言えない」と話す。

日本では2009年12月にHPVワクチンが承認され、2010年に緊急促進事業として積極的な接種勧奨が始まった。その結果、当時対象年齢であった1994年から1999年生まれの女性の接種率は7割に上った。

ところが2013年に定期接種化されてからわずか2カ月後、厚労省は積極的勧奨をとりやめた。公費接種は続けてきたが、自治体からの通知や広報活動が消えたことで、その後の対象世代の接種率は1%未満にまで激減したと推定されている。

なぜいま積極的勧奨が再開されたのか。再開に9年近くを要した理由について厚労省の担当者は「一度ついた危険なイメージをどう解消するかという点に、もっとも時間がかかった」と説明する。

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