塩野義コロナ薬「承認見送り」の審議に残る違和感 目立った「緊急承認」の制度趣旨との隔たり

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審議会には医師や大学教授、弁護士など40人の委員が参加。議論は2時間行われ、YouTubeでも同時配信された(記者撮影)

全国各地で過去最多の感染者数を更新するなど、急拡大する新型コロナ第7波。そのさなか、塩野義製薬が開発中の新型コロナ治療薬「ゾコーバ」の緊急承認が見送られた。

厚生労働省の審議会が開かれた7月20日、YouTubeで同時配信されたその様子を、塩野義の社員らも見守っていた。承認見送りという結果に、社員の1人は「今後の治験で結果を示すしかない」と肩を落とした。

承認されていれば、国内で承認された新型コロナの経口薬としては3例目、そして初の国産の新型コロナ薬となるはずだった。

審議の様子を異例の一般公開

ゾコーバは、5月に創設されたばかりの緊急承認制度の下で審査が進められている。一般的な薬事承認では最終段階の大規模な治験(第3相試験)が必要だが、同制度では、その前段階であっても有効性が推定できるデータがあれば承認が行える。新型コロナのような感染症拡大の緊急時に、迅速な医薬品承認を実現するためにつくられたものだ。

医薬品の承認を審議する会合は通常非公開で、詳細な内容は厚労省のホームページで議事録が後日掲載されるのみ。しかしゾコーバは緊急承認制度の初適用となる可能性があることから、制度の透明性を確保するため、審議の様子は報道陣に一般公開された。

当日は医師や大学教授、弁護士など40人の委員が出席し、2時間にわたって議論が行われた。冒頭、医薬品の審査を行う医薬品医療機器総合機構(PMDA)から、ゾコーバの評価が読み上げられた。PMDAは、塩野義が事前に設定した治験で評価する項目(主要評価項目)の1つ、「症状改善」の未達を指摘し、現時点のデータでは有効性の推定ができないとした。

一方でもう1つの主要評価項目である「ウイルス量の減少」は達成されていることから、第7波の感染状況を鑑みて総合的に有効性の推定を議論することを委員に求めた。それでも委員からは症状改善の未達などを指摘する声が相次ぎ、これが承認見送りの最大の理由となった。

塩野義側も「主要評価項目を達成していることがベストだとは理解している」(広報担当者)と認め、9月末までに最終治験の速報値提出を目指すという。

ただ、今回の審議は複数の点において、「緊急承認」の制度趣旨との“ずれ“が垣間見られるものだった。

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