今の若者たちはなぜ「絶対に失敗したくない」のか 自己責任論が生んだ「ゼロリスク世代」の未来像

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稲田豊史×金間大介「絶対に失敗したくない日本人のエンタメ消費論」がフルで視聴できるアーカイブ視聴チケットが発売中です(11月4日まで)。詳しくはこちら(写真:著者提供)

若者へどうアドバイスすればいい?

金間:失敗を徹底的に回避するこうしたゼロリスク志向、思考停止状態は今後どこまで続くのでしょう。イノベーション研究者としては、日本が何も生み出せない国になってしまうのでは、と心配になります。

稲田:物語エンタメの世界にも、ゼロリスクの快適さを求める気運が見受けられます。普通、主人公は逆境を乗り越えて成長していくものですが、不快な登場人物に水を差してほしくないという声が、ライトノベルやアニメの分野で目立ちはじめている。最初から最後まで主人公は最強で、1回も悩んだりしない。そういう快適さを求めている読者が結構多いと、あるラノベ編集者の方が言っていました。

金間:同じようなことを危惧される方々から、「今の若者とどう付き合えばいいのか」「仕事上のアドバイスをどう伝えればいいのか」と質問されるときは、こんなふうに答えています。

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「若いとき、自分は~ということをしなくて後悔してる。だから、お前は俺のようにはなるな。今やれることをやりなさい、応援するから」。かっこいい言い方ですが、いい子症候群にはあまり響きません。逆に、刺さるのは次の言い方です。「あのとき、自分は~ということをしなくて後悔した。だから、今からやろうと思って、参考書を本屋で10冊買ってきたんだ。さっそく始めてみたんだけど、これがおもしろくてさ」。

稲田:なるほど。今、自分は実行しているよという現状報告ですか。

金間:そうです。いい子症候群の若者たちは、現役選手のことはストレートに尊敬します。「こんなキャリアがある人でも、失敗して、またやり直すんだな」というところにかっこよさを感じる。そして、もっと聞かせてくださいという姿勢になります。

そうなったら、「ちょっと手伝ってくれないか」と言ってみてください。「もちろんです。何をやればいいですか」と返ってきます。

稲田:歳を取ると「いい年して奮闘してるなんて恥ずかしい」という感覚が生まれがちですが、その逆なんですね。

金間:大人ががんばって世界を変えようとすることで、それを見た若者たちも少しずつ変化していく。やっぱり「若者は大人のコピー」なんですよね。

稲田 豊史 編集者・ライター

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いなだ とよし / Toyoshi Inada

1974年、愛知県生まれ。ライター、コラムニスト、編集者。横浜国立大学経済学部卒業後、映画配給会社のギャガ・コミュニケーションズ(現ギャガ)に入社。その後、キネマ旬報社でDVD業界誌の編集長、書籍編集者を経て、2013年に独立。著書に『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形』(光文社新書)、『ぼくたちの離婚』(角川新書)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)などがある。

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金間 大介 金沢大学融合研究域融合科学系教授、東京大学未来ビジョン研究センター客員教授

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かなま だいすけ / Daisuke Kanama

北海道生まれ。横浜国立大学大学院工学研究科物理情報工学専攻(博士)、バージニア工科大学大学院、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、文部科学省科学技術・学術政策研究所、北海道情報大学准教授、 東京農業大学准教授、金沢大学人間社会研究域経済学経営学系准教授、2021年より現職。主な研究分野はイノベーション論、技術経営論、マーケティング論、産学連携等。著書に『イノベーションの動機づけ:アントレプレナーシップとチャレンジ精神の源』(丸善出版)、『イノベーション&マーケティングの経済学』(共著、中央経済社)など。

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