なぜ今の若者たちは「映画を早送りで観る」のか ほめられたくない「いい子症候群」との共通項も

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現代の若者の姿に切り込んだ2冊が話題となっている。それぞれ異なるテーマを扱いながらも、現代日本人の抱える同種の問題に、別の側面からスポットを当てたものだ(写真:Graphs/PIXTA)
映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形』と『先生、どうか皆の前でほめないで下さい――いい子症候群の若者たち』。現代の若者の姿に切り込んだ2冊が話題となっている。
『映画を早送り……』は、「なぜ映画や映像を早送り再生しながら観る人がいるのか?」という違和感と疑問から始まった取材が突き当たった社会背景について切り込んでいる。一方の『先生、どうか……』は、「目立ちたくない」「決められない」「浮いたらどうしよう」といつも考える今の若者の心理を鋭く描いている。
今年ほぼ同時期に出版された2冊は、異なるテーマを扱いながらも、現代日本人の抱える同種の問題に、別の側面からスポットを当てたものだ。2022年10月3日に本屋B&Bが開催したトークイベントで、著者2人が大いに語り合った。
(本記事は同イベント「稲田豊史×金間大介『絶対に失敗したくない日本人のエンタメ消費論』」の内容を再構成しました)

「倍速視聴する人たち」と「いい子症候群」

稲田豊史(以下、稲田):最近、映像作品を倍速で観たり、退屈なシーンを10秒単位でスキップしながら観る人が増えてきました。20歳から69歳の約3割、20代だと半数ぐらいは倍速経験者だという民間調査もあります。大学生以下に絞ればもう少し多いでしょう。倍速視聴の理由を聞くと、「お金を払ったんだから、どう観ようが勝手」「倍速でも内容を100%理解できているから問題ない」「普段から大学の講義も2倍速で聞いてるから、ドラマや映画が等倍速だとまどろっこしい」と。

『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

金間大介(以下、金間):大学で教える側としては認めたくないですが、今の学生たちはかなり講義を倍速視聴してますね(笑)。背景には何があるのでしょうか。

稲田:まず、安価な定額制動画配信サービスの普及によって観られる作品の数が劇的に増え、と同時に“はやりについていくために観なければならない作品”も増加したため、時間が足りなくなったこと。そしてタイパ(タイムパフォーマンス)を求める人が増えたことですね。

金間:タイムパフォーマンス、時間対効果というやつですね。

稲田:「2倍速で見れば、1本分の時間で2本観られて得」「2時間の映画を2時間もかけて観るなんてもったいない」というわけです。連続ドラマの途中話を飛ばしていきなり最終回を観たり、結末だけ先に知りたいからとネタバレサイトを先に読んでから観る人もいます。そういうふうに視聴する若者たちの多くがよく口にするのが、「私、せっかちなんで」という言葉でした。

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