なぜ今の若者たちは「映画を早送りで観る」のか ほめられたくない「いい子症候群」との共通項も

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金間:なるほど……。私の本『先生、どうか皆の前でほめないでください』では、若者の「いい子症候群」について書いていますが、「とにかく結論や正解を早く教えてほしい」など、倍速で観る人たちとの共通項は多そうです。

稲田:正解を教えてほしいのは「間違えて怒られたくない」からだと理解できるんですが、いい子症候群の若者たちは、「ほめられる」ことも嫌がるんですよね?

金間:大人の世代は、ほめられることは良いことであって、怒られることは良くないこと、何も言われないのはセーフだと考えますよね。ところが、今の学生は何も言われないのが一番良くて、ほめられるのと怒られるのは同じ程度に悪いこととして受け止める。ほめられた直後に、それを聞いた他人の中の自分像が変化したり、自分という存在の印象が強くなったりすることをものすごく怖がる。

稲田:悪目立ちしたくないと。

金間:はい。ほかにも「自分の意見は言わない」「目立ちたくない」「変なこと言って浮いたらどうしようといつも考える」「言っても当たり前のことしか言わない」「質問しない」「先頭には立たない」「場を乱さないために演技する」といった特徴があります。

対立を好まない若者たち

稲田:金間さんの本を読んで、彼らの多くが「結果平等」を求めていることに驚いたんですよ。

金間:①平等分配、②必要性分配、③実績に応じた分配、④努力に応じた分配のうち、どの分配方法を支持するかを、若者を対象に調査したデータですね。①は完全に均等、②は扶養家族手当のような、本当に必要な人にちょっと多く分配する方法です。

今から20年前に行われた調査で男女とも支持が一番多かったのは、④の努力分配。つまり「がんばった人に手厚く」です。男性には③の支持も多く、成果主義の意識もうかがえました。ところが、私が2018~2020年に同じ調査をしたところ、男女ともに①の平等分配が半数を占めました。

稲田:まるで共産主義ですね(笑)。

金間:別の調査では、「自分で事業を起こしたい」というチャレンジ精神が、若い世代になるにつれぐんぐん減っていることがわかっています。そして「有名な大学に通ったほうが、人生有利だ」と考える割合も非常に高まっているのです。

稲田:若いのに、学歴主義?

金間:はい、安定志向の現れです。社会全体ではようやく学歴主義が修正されてきた印象ですが、今の若者は逆行している。「政権与党をいちばん支持しているのは20代」というデータもあります。とにかく安定を好む。そして対立を好まない。

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