なぜ今の若者たちは「映画を早送りで観る」のか ほめられたくない「いい子症候群」との共通項も

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若手芸人たちの“失態”を見て学習 

『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

稲田:お笑い番組もいくばくかの影響を与えてきたと思います。2000年代半ばくらいからの傾向だと思いますが、ひな壇芸人のトークにうまくオチがつかなかったり、笑いが少なかったりすると、司会者がそこに突っ込みを入れ、辱めて笑いを取るようになりました。トークの完成度を腐すこと自体が、メタな笑いになったんです。

子供たちは、そういうふうにスベった若手芸人たちの“失態”を見て、「ちょっとのミスでも台無しになる」「“正解”を知っておかなきゃ恥をかく」「ヘタなことは言わないほうがいい」と、言語化しないまでも学習しました。

金間:よくわかります。私は本の中で「若者がこうなったのは大人のコピーだからです」と書いていますが、そこに通じる気がします。

稲田:ビジネス界隈の大人って、すぐ「要点をペラ1枚でまとめろ」とか「結論を先に言え」とか言うじゃないですか。それを社会に出る前の若者たちが、ネットを介して真似してるだけなんですよ。

そうそう、若者の「結論を早く教えてほしい」で言うと、本についてのインタビューやメディア出演時に、結構言われるんですよ。「では、倍速視聴の背景を一言で説明してください」って(笑)。つくづく、そういう大人たちのコピーなんですよね、今の若者は。

(後半につづく)

稲田 豊史 編集者・ライター

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いなだ とよし / Toyoshi Inada

1974年、愛知県生まれ。ライター、コラムニスト、編集者。横浜国立大学経済学部卒業後、映画配給会社のギャガ・コミュニケーションズ(現ギャガ)に入社。その後、キネマ旬報社でDVD業界誌の編集長、書籍編集者を経て、2013年に独立。著書に『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形』(光文社新書)、『ぼくたちの離婚』(角川新書)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)などがある。

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金間 大介 金沢大学融合研究域融合科学系教授、東京大学未来ビジョン研究センター客員教授

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かなま だいすけ / Daisuke Kanama

北海道生まれ。横浜国立大学大学院工学研究科物理情報工学専攻(博士)、バージニア工科大学大学院、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、文部科学省科学技術・学術政策研究所、北海道情報大学准教授、 東京農業大学准教授、金沢大学人間社会研究域経済学経営学系准教授、2021年より現職。主な研究分野はイノベーション論、技術経営論、マーケティング論、産学連携等。著書に『イノベーションの動機づけ:アントレプレナーシップとチャレンジ精神の源』(丸善出版)、『イノベーション&マーケティングの経済学』(共著、中央経済社)など。

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