今の若者たちはなぜ「絶対に失敗したくない」のか 自己責任論が生んだ「ゼロリスク世代」の未来像

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稲田:日本人は自己責任をとても重視するんですね。にしても非情な国民だ……。

金間:就職活動のエントリーシートに書く「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」にも、若者の失敗回避傾向を強く感じます。失敗したくないから、ネット上に匿名でアップされている前年の内定者エピソードをコピペしちゃったりする。他人の評価、他人の判断、他人の価値観に乗っかりやすい。

稲田:エンタメ作品も、みんなが観ているものから順番に観る。観ている人が多いほうがハズレない、つまり失敗する確率が減るからです。

金間:私の本では、SNS上のインフルエンサーがなぜこんなに人気なのかについても触れています。結論としては、インフルエンサーの勧める商品やサービスに追随していれば、何も考えないで済むからです。

稲田:インプットからアウトプット、あるいはインプットからアクションまでの時間が短すぎることも、背景にあるように思いますね。本来は情報を得たら、自分の感性に照らし合わせて判断を下すために一定の時間が必要です。だけど、今は摂取すべき情報が多すぎて、熟考するだけの時間がない。それゆえか、「映画はこの10本を観ておけば大丈夫」「アメリカ文学を語るなら、この3冊だけ読めばいい」というような〝ファスト教養〟的なふるまいも横行していますよね。

金間:たしかに(笑)。テレビCMは、観て興味を持っても、その後自分で比較検討して買うか買わないかの意思決定をしなくちゃならない。インフルエンサーの場合は投稿を見てすぐ「買う」ボタンをポチッとすれば完了。ファストどころじゃない、瞬間に決めてしまう。思考停止消費です。

稲田:広告はもちろん、ニュースや「自分の好きなもの」でさえ、ネット上のアルゴリズムによって、個人別にカスタマイズされたサジェストが降ってくる。本当に、何かを考えて選ぶ必要がない時代になりました。

欲しいのはdoじゃなくbe

金間:先ほど稲田さんは、倍速視聴する人たちはタイパ(タイムパフォーマンス)を重視しているとおっしゃいましたが、個人的には「パフォーマンス」という言葉にはちょっと違和感もあります。いい子症候群の若者たちにはそぐわない積極的な意味が含まれるからです。

今の若者はワークライフバランスを重視すると言われますが、これも積極性を内包する言葉で、「積極的に時短して空いた時間を有意義に使う」というニュアンスがある。それもいい子症候群が好むことではありません。少し前、仕事終わりに若者を飲みに誘ったら「それって残業代出ますか?」と返されたという話が話題になりましたが、それは〝意識高い系〟であって、断るだけの主体性をいい子症候群の若者たちは持ち得ていません。しかも、仮に空いた時間で若者たちが何をしているかというと……。

稲田:TikTokを見ていたりする(笑)。

金間:そう(笑)。Instagramで延々とストーリー(動画)を見ているだけだったり。

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