だが、それを見た共同創業者で兄弟のエヴァンとグレッグ・スピリデルリスは、むしろまちがったスペルのまま、その看板を展示しようと決めた。「この会社は失敗を受け入れるし、気難しく考えすぎない」ことを、いつも忘れないように。
オフィス空間によって理念を強化する
陽気さを育む空間をデザインすることは、組織の重要な理念を強化する上でも大きな役割を果たす。
IDEOはその達人で、面白くて刺激的な問いを壁に貼って、従業員たちからの回答を募集するかと思えば、トイレの便器の前にミニゴルフのパターマットを設置する〔便座に腰かけて短いパターをもち、ホールにゴルフボールを入れる〕など、オフィスじゅうにあっと驚く仕掛けが用意されている。
フォレスター社では、あるチームがオフィスの壁に「今週の名言」というコーナーを作って、面白おかしい瞬間やコメントを貼り出し、会社のみんながオフィスでも積極的にユーモアや喜びを味わえるようにしている。
またテスラ社は2014年に全特許を公開すると発表した際、その重要な節目を記念して、ある有名なネタをもじって「テスラのすべての特許をみなさんに(ALL OUR PATENT ARE BELONG TO YOU)」というメッセージを、工場の巨大な壁に誇らしげに掲げた〔1990年代の日本のゲーム「ゼロウィング」が欧州版にローカライズされた際、ALL YOUR BASE ARE BELONG TO US(君たちの基地はすべて私たちがいただいた)という、文法的に稚拙な英訳が注目を集め、有名なネットミームになった〕。
つまり、オフィス空間の改良は、企業のカルチャーの価値観や個性を明確に打ち出すことと同じくらい重要なことなのだ。
ピクサー社を訪問した際、私たちはエドウィン・キャットマルの案内で社内を見て回った。
クリエイターたちが忙しそうにオフィスを飛び回っている。凝った装飾のデスクもあれば、個人用の小屋のような空間もいくつか見かけた。ピクサーのアニメーターおよびディレクターを長年務めているブラッド・バードは、こう語っている。