カタールW杯、仏で「観戦イベント不開催」相次ぐ訳 パリやリヨン、マルセイユなどが軒並み表明
フランスがカタールを問題視する点はほかにもある。カタールは、イスラム教の国としてはリベラルなほうとはいえ、公衆の面前でのアルコール類の飲酒が禁じられているほか、同性愛は違法であり、厳格な反LGBTQ+も存在する。
今年7月に開催された世界経済フォーラム(WEF)が発表した2022年の男女平等度を示す「ジェンダーギャップ指数」でカタールの総合ランキングは146カ国中137位。カタールのW杯開催を嫌悪するフランス人からは、「男女平等などで人権問題を抱える国で、改善の意思もないままに開催を認めたことが問題だ。私は観戦しない」という批判の声も上がっている。
なおカタール政府は、どんな性的嗜好があっても入国でき、観戦もできるとしている。試合中に同性愛者を表すレインボーフラッグの使用もFIFAの規定に従うという。反LGBTQ+法の廃止を主張する過激な抗議行動を警戒しており、社会秩序を乱すことを極力避けたい意向だ。
スタジアムの冷房による膨大なエネルギー消費も懸念
人権問題やジェンダー問題だけでなく、地球温暖化対策でも中東でのW杯開催は問題視されている。そもそもカタールW杯は異例だ。W杯は従来、夏に開催されていたが、酷暑を避けるために今回は冬に開催される。さらに暑さ対策のために、各スタジアムには冷房システムを導入しているが、それが膨大なエネルギーを消費すると指摘されている。
W杯を主催するFIFAは、カタールW杯を史上初となるカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量と吸収量の相殺)を目指す大会としている。
だが、欧州の非営利団体(NGO)カーボン・マーケット・ウォッチ(CMW)によると、主催者の計算からは温室効果ガスの排出量が省略されていると指摘した。また、脱炭素化を達成できない場合に適応される、他の温室効果ガス活動に投資するカーボン・オフセットの仕組みも脆弱だと懸念を表明した。
カタールに行かないことを決めているサッカー元選手は少なくない。
現役時代にドイツ代表の主将を務め、ワールドカップ優勝に導いたフィリップ・ラーム氏は、カタール入りをボイコットすることを明らかにした。その理由について、フランスのスポーツ紙『レキップ』のインタビューで「小さな国の小さな空間に8つもの最先端のスタジアムが存在するなんて、サステイナブルであるわけがない。それに、フットボールの雰囲気もあるはずがない」と述べた。
フランスだけでなく、世界中からさまざまな批判があるカタールW杯。ただ、主催国であるカタールはオイルマネーを背景に、そうした批判を物ともしない勢いで、開催に突き進んでいる。
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