統一教会へ「解散命令」請求をしない文化庁の謎 「信教の自由」を理由に及び腰な政府の姿勢

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安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件の背景には、「宗教」の影があった。10月3日発売の週刊東洋経済は「宗教 カネと政治」を特集。
「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会、以下、統一教会)をめぐっては、信教の自由を理由にした行政の及び腰な姿勢が浮き彫りになった。文化庁は野党のヒアリングにおいて、統一教会は現時点で解散命令を請求する対象に当たらないとの見解を示した。九州大学の南野森教授(憲法学)に信教の自由はどこまで保障されるのか、話を聞いた。

──宗教法人に対する解散命令請求は過去に2例しかなく、文化庁は慎重な姿勢です。

週刊東洋経済「宗教 カネと政治」
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大前提として、宗教法人を解散させることは、信教の自由の直接的な侵害には当たらない。1996年に解散命令が出されたオウム真理教の最高裁判所決定でも、同様の判断が示されている。

宗教法人格がなくなると、税制上の優遇といった「特典」がなくなるが、宗教団体としての活動は維持できる。信教の自由と宗教法人としての特権が失われることは、切り分けて議論する必要がある。

過去に解散命令が出された2例はオウム真理教と、2002年の明覚寺だ。明覚寺は霊視商法で一般の人を脅して献金を集めた。この点で統一教会と類似する。

解散要件は抽象的

──宗教法人法の解散要件には、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」とあります。過去の2例と比較して、どう位置づけられますか。

この解散要件は非常に抽象的だ。過去の2例は、教団の教祖や幹部が刑事事件で逮捕されている。そのため文化庁は、刑事裁判で宗教法人本体の役員などの責任が認められないと解散要件に当てはまらないと解釈している。

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