統一教会の「恫喝」に耐えた鈴木エイトの闘い メディアが再び萎縮すれば時間は逆戻りする

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「私が記事を書く媒体には、たいてい教団からクレームが入りました。鈴木エイトは信用ならない、だから書かせるべきではない、何なら当法人が正しい記事を書くライターを紹介する、といった内容です。とりわけ一時期まで私が頻繁に記事を書いていたハーバー・ビジネス・オンラインは苦労を強いられました。

教団や政治家が訴訟恫喝をしかけてきたからです。運営する扶桑社や担当編集者、編集長の皆さんは共に闘ってくれたのですが、ある教団は扶桑社の親会社に直接クレームを入れるようになり、以後、扶桑社系のメディアでは宗教の記事を書けなくなりました。担当編集者は連載の書籍化を検討してくれましたが、企画も通りませんでした」

圧力に萎縮してしまったメディアの責任

鈴木氏は、5年前に統一教会が発行したニュースリリースを今も所持する。「自称鈴木エイト氏のフェイクニュース拡散の意図とその手法について」と題された文書だ。その文書は、『週刊朝日』に鈴木氏が書いた記事について「彼の空想に基づくデマ」と断じ、記事に登場する全国霊感商法対策弁護士連絡会の名も挙げて「鈴木氏と弁護士のマッチポンプ、自作自演の連携によるフェイクニュースに、週刊朝日がまんまとだまされてしまった」と、こき下ろしている。

事件現場に置かれていた花束
安倍元首相銃撃事件の現場に置かれた花束(編集部撮影)

「メディアが教団に触れなくなった背景には、こうした教団側からの圧力があったのです。ただし、教団には報道を止める権限はありません。報道が減ったのは、メディアが自主規制してきたからです。統一教会は事件後のマスコミ報道を『魔女狩り』だともっともらしく批判し、それに同調する言論人も出てきました。ですが、ここでメディアが再び萎縮してしまえば時間は逆戻りし、同じ過ちを繰り返すことになる」

同様の事件を二度と起こさぬためにも、重く受け止めたい指摘だ。

野中 大樹 東洋経済 記者

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のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

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