「ちむどん」以上に"NHK夜ドラ"最終週に期待の訳 「あなたのブツが、ここに」に詰め込まれた"現実"

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さて、ここで語らなければいけないのは、『あなたのブツが、ここに』と同時に最終週を迎える朝ドラ『ちむどんどん』のことである。

ここ数カ月、ハッシュタグ「#ちむどんどん反省会」が盛り上がるなど、評価は決して芳しいものではなかった。

しかし興味深いのは、スポーツ報知が「【ちむどんどん】バッシング強まる中、視聴率が落ち込まないのはなぜか」(9月17日)という見出しの記事を掲載するように、少なくとも世帯視聴率は低くないという事実。

私もここまで、一視聴者として完走してきて思うのは、『ちむどんどん』が備える「つっこまれビリティ」である。意識的に脇を甘くして、SNSなどで「つっこまれる」余地を残すことで、視聴者との絆を更新するという、現代のエンタメコンテンツには必須の要件の1つ。

この「つっこまれビリティ」が機能して、『ちむどんどん』の視聴率が維持しているのではないか(そう言えば『カムカムエヴリバディ』にも「つっこまれビリティ」がかなり備わっていたように思う)。

『ちむどんどん』に欠けているもの

ただ、評判を聞く限り、さすがに脇が甘すぎたかとも思うのだが、それでも、少なくとも私にとっては、『ちむどんどん』に関する「朝ドラ史上最悪」などの報道は、さすがに言葉が過ぎると感じる。この10年間に、もっと「最悪」で、かつ「つっこまれビリティ」にも欠けた朝ドラが少なくとも2つはあったと、私は思っている(タイトルは出さないが)。

私がいちばん不満に思う点は、脇の甘い荒唐無稽な展開ではなく、歴史的現実との乖離である。期待を込めて、放送開始後すぐに『朝ドラ「ちむどんどん」の出足が暗黒だった理由』という記事に、こういう文章を書いた者として。

『ちむどんどん』に向けられる最大の期待は、羽原大介による脚本である。具体的には先に書いた「暗黒」=貧困の背景となる戦争をどう描くかへの期待だ。

脚本を手掛けた羽原大介は、朝ドラでは『マッサン』、そして映画では名作『パッチギ!』を手がけた人である。日本とスコットランド、日本と韓国という国籍・民族のギャップを、巧みに描いた人。

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