トヨタのコンパクトミニバン「シエンタ」が2022年8月23日にモデルチェンジし、3代目に進化した。すでに販売店などで実車を目にした人もいるだろう。
筆者がまず感じたのは、「初代に戻った」ということだ。初代は当初、丸型ヘッドランプを据えた、可愛らしい表情で登場したが、マイナーチェンジで追加された角型ヘッドランプの「ダイス」では、機能面を前面に押し出していた。このシエンタダイスを思わせたのだ。
しかし、先代となる2代目はそれとは対照的で、トレッキングシューズをモチーフとしたアクセントラインをバンパー周辺に配し、ボディサイドにも大胆な曲線を入れるなど、躍動感を前面に押し出していた。
アクセントカラーはブルーやブラウンを選ぶことも可能で、ミニバンということを考えれば、かなり大胆なカラーコーディネートだった。
しかしながら先代は、個性の強さゆえに買い控える人もいたようで、日本自動車販売協会連合会の統計によると、2020年以降は年間登録台数でライバルのホンダ「フリード」に逆転されていた。マイナーチェンジでアクセントカラーが廃止され、一般的な2トーンカラーが導入されたことからも、好き嫌いがわかれていたことがわかる。
しかも、先代はタクシー需要も多かった。都市部で見かける「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」が、先代シエンタをベースに生まれたことを知っている人もいるだろう。しかし、JPN TAXIは高価であることから、地方のタクシー事業者はシエンタを導入するところが多かった。筆者も何度か乗ったことがある。
こうした状況も、初代のダイスに近い雰囲気に戻した理由になったと思われる。事実、発表資料の中のデザインを語る部分にも、「アクティブさを狙った先代から、ライフツールとしての機能を素直に表現した方向へシフトした」と記してあり、イメージスケッチにはタクシーを描いたものもあった。
デザインコンセプト「シカクマル」
資料の中にはデザインコンセプトとして「シカクマル」という言葉がある。これを見て、一部では2013年に日本で発売されたフィアット「パンダ」のデザインコンセプト「スクワークル」と似ているという声があがった。
スクワークルとは、スクエアとサークルを掛け合わせた造語だ。スクエアは四角、サークルは丸という意味なので、シカクマルは直訳形に近い。現行パンダと新型シエンタを写真で見比べると、このフレーズだけではなく、前後まわりに似ている部分が多い。
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