原発増設「賛成」するフランス人が増えた根本理由 再生可能エネルギーの効果を疑問視する声も
フランスのマクロン大統領が今年2月10日に表明した2050年までに国内に少なくとも原子炉6基を新規建設し、6基とは別にさらに8基を建設する検討も始めると表明したことが、欧州連合(EU)のみならず、世界から注目が集まっている。
カーボンニュートラル(脱炭素化)を目指す世界各国が、想定外のウクライナ危機に襲われ、ロシア産の化石燃料脱却に動く中、エネルギー価格が急騰し、深刻なエネルギー危機に陥る状況が現実味を帯びているからだ。
世界でアメリカに次ぐ原子炉56基を保有するフランス。世界的に原発廃止の動きもある中、なぜ、原発増設に舵を切ったのか、国民はなぜ猛反対しないのか、その理由はフランス人らしい合理的思考とエネルギー主権にあることは間違いない。
同時にエネルギー危機にさらされる世界に対して原子力開発への投資には世界の原子力市場で優位に立つという戦略も見え隠れしている。
マクロン政権の原発推進政策を後押しする世論
実はマクロン政権が進める原発推進政策には政府の計算された総合戦略だけでなく、世論が後押ししている。
エネルギー専門のジャーナリストが運営するフランスのウェブサイト「エネルギーの世界」(LME)の最近の記事によれば、フランスで1999年に実施した世論調査では、原子力発電所の建設継続の必要性に同意したフランス人はわずか11%、反対は64%だった。
ところが昨年来の複数の世論調査によれば、昨年5月時点では賛成53%、今年の大統領選前後では60%に近づき、反対は30%を割って完全に逆転したと同記事は伝えている。さらに反原発運動の環境団体の信頼性も13年前は64%だったのが35%に低下し、原子力安全庁(ASN)の信頼性も42%から64%に向上したと指摘している。
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