原発増設「賛成」するフランス人が増えた根本理由 再生可能エネルギーの効果を疑問視する声も

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一方で天然ガスの調達ルートの多角化もロシア産ガスとの決別にとって重視されている。

1つは北アフリカ最大の天然ガス産出国であるアルジェリアから地中海を渡りイタリアに達するパイプラインの活用強化だ。

アルジェリアが政治不安定なことでガス輸入が停滞していた中、同国の旧宗主国フランスが長年抱えてきた外交問題を打開するため、今年8月末、マクロン氏がエネルギー相を含む主要閣僚を引き連れ、アルジェリアを訪問した最大の目的は天然ガスの輸入にあったといわれている。

フランスはすでに液化天然ガス(LNG)のターミナルをイギリス海峡沿い、大西洋沿い、地中海沿いの3カ所に保有しているため、アメリカ、カナダ、エジプト、カタールなどからの輸入が可能だ。ドイツはロシアからのガスパイプライン、ノルドストリームに頼ってきたため、ターミナル建設は着手したばかりだ。

9月初旬、マクロン大統領はドイツのショルツ首相に対して、フランスが不足分の天然ガスを供給する代わりに、不足分の電力をドイツがフランスに供給する提案をして合意した。ただ、ドイツの電力が石炭で発電されたものの場合、温暖化対策に逆行するとの批判もある。

フランスは原発推進で自給率を高めると同時に再生可能エネルギー導入を強化するのが、ウクライナ危機に対処しながら脱炭素化目標達成のための主要なエネルギー戦略の柱であることは変わりない。無論、原子炉の耐用年数の問題や欧州型加圧原子炉(EPR)の建設が大幅に遅れているといった問題などの課題もある。

問われる日本のエネルギー戦略

世界は今、ウクライナ危機がもたらしたエネルギー危機と戦いながら、一方では2050年までの脱炭素達成に向けた取り組みを迫られている。重要なことは経済活動や国民生活への影響を最低限に抑えることにある。COP26で合意した最も温暖化ガスを排出する石炭発電の段階的廃止がベストな選択なのか、再検討する必要があると筆者は考えている。

ひるがえって日本を見ると、EUのように加盟国間で助け合いながら難局を乗り切るという環境にはない。さらにロシアのサハリンの天然ガス開発投資の継続を表明したが、自らの身を切ってロシアに制裁を課す西側諸国からの信頼を得られるかは極めて怪しい。

日本は目先の課題に翻弄されることなく、ウクライナ戦争によるエネルギー危機、2050年の脱炭素に向けた総括的で将来像を見据えた独自のトータルな戦略と本気度を世界に示す必要がある。とくに安全保障への意識が高まる中、エネルギー主権は最重要な優先課題といえる。

安部 雅延 国際ジャーナリスト(フランス在住)

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あべ まさのぶ / Masanobu Abe

パリを拠点にする国際ジャーナリスト。取材国は30か国を超える。日本で編集者、記者を経て渡仏。創立時の仏レンヌ大学大学院日仏経営センター顧問・講師。レンヌ国際ビジネススクールの講師を長年務め、異文化理解を講じる。日産、NECなど日系200社以上でグローバル人材育成を担当。

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