原発増設「賛成」するフランス人が増えた根本理由 再生可能エネルギーの効果を疑問視する声も

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

今年4月に実施された右派の有力候補が乱立し、左派が劣勢に回ったフランスの大統領選挙でも中道のマクロン氏をはじめ右派候補者は軒並み原子炉増設政策を公約に掲げた。選挙結果はその後の世論調査とも一致し、フランス国民は原発推進にシフトしたことが理解できる。

ただし、LMEによれば、国民の半数が原発の安全性やプルトニウム廃棄の安全に確信が持てていないとも答えているという。

では、どうしてフランス国民の意識は大きく変化したのか。LMEを含め、専門家の指摘する世論の変化の理由で興味深いのは、代替エネルギーが地球温暖化対策として効果を上げていないのでは?と疑問視する人が増えたという点だ。

今年6月から南欧を襲った熱波は9月に入っても続き、山火事、干ばつで農業、林業、生態系は過去最大規模の被害を受け、ヨーロッパ人なら誰でも異常気象を身をもって経験した。メディアも一斉に地球温暖化が異常気象の原因と報じた。

そのため、環境問題への関心は過去最大レベルに高まるとともに、再生可能エネルギーへの転換効果について疑問視する声も上がった。

代替エネルギーのコスト高にウクライナ危機が追い打ち

さらに太陽光発電などの代替エネルギーのコストが高止まりし、国際エネルギー機関(IEA)の2021年の統計では、年間の太陽光発電導入量/累積容量の世界ランキングのトップは中国、日本は4位、ヨーロッパではドイツが6位で、フランスは10位に甘んじている。

実は太陽光発電技術の主な原理は「光起電力効果」で、1839年にフランスの物理学者が発見したものだが、フランスでは普及が進んでいない。新築戸建て住宅が少ない事情もあり、そもそもテクノロジーに奥手のフランス人は、再生可能エネルギー導入に次の一歩を踏み出せない状況にある。ハイブリット車も将来、EV車だけになるなら、中古で売れないと考えるフランス人が多く、買い控えしている。

そこにウクライナ危機が追い打ちをかけたことで、エネルギー価格が高騰。天然ガスが全エネルギー消費量の17%と比較的低いフランスでも、今年11月からエネルギー価格が高騰するとして、政府はエネルギー消費を15%下げるよう国民に呼びかけており、原発を手放すことは問題外との機運が高まっている。

さらに、「原発の廃止を議論してきた欧州で、ASNなどの専門機関が原発の安全性についての科学的説明を丁寧に行ってきたことや、安全管理を徹底し、国民に対して透明性を高めて伝えてきた努力から、啓蒙が実を結んだことも影響している」と指摘されている。

次ページEUタクソノミーに原子力が組み込まれた
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事