「報酬減でも定年後の仕事に満足」な人が多い理由 「やりがいある仕事を奪われ失意」は現実と乖離

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定年後の仕事はストレスが大きく減る(写真:ふじよ/PIXTA)
定年後に働くことは、やりがいのある仕事から外され、過去の栄光とのギャップに苦しむ暗いイメージで語られがちだ。しかし、数々のデータはそれとは真逆の実態を示している。健康である限り長く働くことが求められるこれからの時代、本当の定年後とはどのような未来なのかを見ていく(※本稿は『ほんとうの定年後 「小さな仕事が日本社会を救う」』より一部抜粋・再編集してお届けしています)。

定年後の働き方は、仕事に関する能力の向上を日々感じながら働く現役時代の働き方とは確かに異なる。定年後は、こうした自身の能力の変化と合わせて仕事の内容にも変化を感じるようになる。人々は定年前後に訪れるキャリアの大きな変化に対して、どう向き合っているのか。能力と仕事の負荷の兼ね合いという側面から分析を進める。

定年を機に仕事の負荷が下がる

定年前後を境に仕事の負荷はどう変わるか。それは能力の変化と比較して傾向はより明確である。つまり、ほぼすべての項目において定年を境に急速に「上昇する」から「低下する」に転じる。「仕事の量」のほか、「仕事の難しさ」や「仕事における権限」など仕事の質に関する項目、さらに「仕事からの報酬」といった外形的な項目、あらゆる項目で定年前と定年後とで断絶がある(図表1‒29)。

いずれの項目も平均的には下がっていくが、より低下しやすい項目とそれほどでもない項目とがある。相対的に低下が著しいのは仕事からの報酬である。仕事の内容は変わらないのに、定年を境に給与が下がる。このように感じている人も多い。

さらに、仕事の量の低下幅も大きい。60代後半でDIはマイナス30.4%となっており、拡大したと答えている人より縮小したと答えている人がだいぶ多くなっている。

そのほかの項目については、仕事における権限も低下幅が大きい一方で、仕事の難しさなどは比較的小幅の低下にとどまっている。人によっては仕事の質に関するいくつかの項目は維持・向上することもあるだろうが、仕事の量や権限、報酬といった外からもたらされるものはより失われやすい。また、負荷を構成する項目の多くが定年を経た60代前半以降下がり続けると感じていることも事実として指摘できる。

個々によって大きなばらつきはあるものの、定年以降、能力の低下に合わせて仕事の負荷も低下を続ける。そして、定年前と比較して小さな仕事に取り組むことが定年後キャリアの平均像になる。

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