「報酬減でも定年後の仕事に満足」な人が多い理由 「やりがいある仕事を奪われ失意」は現実と乖離

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以上の結果から判明することは、多くの人は、定年後に仕事に関する能力と負荷の緩やかな低下を感じながらも、結果的にその関係性に納得感を抱き、満足して働いているという事実である。

要するに仕事というのは、必ずしも負荷が高いものが良いといえるわけではないのである。人はどうしても現役時代の仕事の延長線上で、仕事の量が多く責任も重い「大きな仕事」が好ましいと考えがちである。しかし、必要となる収入水準が低い状況下であれば、負荷が低い仕事を選ぶことが結果として良い選択になることも多い。

そして、たとえ小さい仕事であっても、いまある仕事に確かな意義を見出せたとき人は充実感を持って働ける。データが示しているのは、こういった事実なのではないだろうか。

仕事への関心が小さくなっていく

歳を取るにつれて、人々の心の中に占める仕事の割合が着実に小さくなることもわかっている。「シニアの就労実態調査」では、就業者に対して「あなたにとって、現在、以下の5つの活動のそれぞれはどの程度の比重を占めていますか。所要時間ではなく、心の中に占めている割合をお答えください」という設問を用意している。「学び」「仕事」「地域・社会活動」「家庭・家族」「芸術・趣味・スポーツ」の日々の5つの活動が、働く人の心に占める割合がどの程度かを調べたものが図表1‒32である。

これをみると、仕事が心に占める割合は、50代の51.9%から70代には38.2%まで下がっていることが確認される。

このデータから定年前の人の生活を振り返ってみると、多くの人は仕事に対して物理的にも精神的にも多くの資源を投入していることがわかる。仕事とは自分の人生のすべてなのだという感覚を持つ人も一定数存在している。

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