「報酬減でも定年後の仕事に満足」な人が多い理由 「やりがいある仕事を奪われ失意」は現実と乖離
なお、能力に比して仕事の内容が不足していると答える人が増えていることにも言及しておきたい。50代後半でそう答えた人は11.4%にすぎないが60代前半には18.8%に高まる。全体の2割と決して多数派ではないが、仕事の内容に物足りなさを感じる人が増えることも事実として確認される。
こうした点もデータから見えてくる重要な事実である。つまり、全体としては負荷を減らしていく方向性が多くの人にとっては好ましいものになるが、現役時代と変わらぬ環境を望む人には年齢による区別なくその機会を提供していくこともとても大切なことであるということだ。
仕事の負荷とストレスとの関係については、政府統計においても調査が行われている。厚生労働省「労働安全衛生調査」では、雇用者に対して、自分の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスと感じる事柄があるかを質問している。この結果を年齢別にみると、現役世代の労働者の半数以上が何かしらの強いストレスがあると回答しているが、60代以上の65.1%の人が仕事に関する強いストレスはないと答えている(図表1‒31)。
仕事には一定のストレスはつきものである。それにもかかわらず、定年後の就業者が強いストレスを感じずに働くことができているのはなぜだろうか。同調査によれば、仕事に関するストレスの原因として主なものは、仕事の量や質、仕事の責任、対人関係などとなっている。シニア世代は現役世代と比較して、これらほぼすべての項目においてストレスが少なくなっているのである。
特に影響が大きいのは仕事の量や対人関係。50代の雇用者のうち仕事の量がストレスの原因であると答えた人は14.8%いるが、60代以上ではそれが5.8%まで低下する。また、対人関係にストレスを感じている人の割合も6.2%から2.8%へと大幅に低下していることがわかる。仕事の量や質、責任が少なく、難しい人間関係も発生しづらい「小さな仕事」だからこそ、ストレスなく働くことができるのである。
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