あのIBMが抱える「政策提言」部隊のすごみ

生き残る世界企業には“提言力”がある!

桑島:単に決まったルールを守るばかりでなく、自らに都合の悪いルールができそうなら、反対の声を上げなければならない。それどころか、先手を打って自分たちに有利なルールを作るよう要請していくということですね。そのために、IBMではどのような具体策をとっていますか。

バーンズ:すぐに思いつくのは、政府の人間をゴルフや夕食で接待するというようなことですが、私たちはそのような単純なことで本当に政府が動くとはまったく考えていません。いちばん大事なことは、本当に国家の競争力につながる政策を研究することです。私たちは提案する政策の質で勝負しているのです。

桑島:“政策の質”ということは、政治や法律とビジネスの両方がわかる人材がいるのですか。

バーンズ:IBMではワシントンだけで、政府渉外の大規模な部門があります。

桑島:それほど力を入れているのですか。そこまでやっている日本企業は、まだほとんどないと思います。

バーンズ:世の中の動きの大きなトレンドの中で、自社のビジネスモデルがどうなるか予測し、どういう法律や政策があれば自社に最も有利かを考え、それを他社に先んじてルールメーキングに関する提案をすることが極めて必要です。

たとえば、現在であればビッグデータやクラウドコンピューティングにかかわる分野は、政策がまったく追いついていない分野です。議会日程や各議員の政策項目やアジェンダ、予算策定のプロセスまで綿密に把握しながら、活動しています。

具体的に政府に働きかける方法には、さまざまな方法とレベルがあります。財政支援(funding)が最も有効な方法だと考えがちですが、実は必ずしもそうとはかぎりません。たとえば議会で証言すること(testimony)も有効です。あるいは米国商工会議所などの団体に対するアウトリーチも効果的なことがある。米国商工会議所はその豊富なメンバーシップを利用して、他団体との連携に成功しています。

桑島:米国では、各州の商工会議所が組織化されていますからね。各議員を動かすためには、その議員の再選を左右する人たち、つまり投票権を持つ人たちに声を上げてもらうのがいちばんだとわかっているのでしょう。

米国商工会議所は、ある議員がお眼鏡にかなわなければ、その議員に対してネガティブキャンペーンを張ることすら珍しくない。さらにほかの団体と連携して、そのときの政府の大きな方針に沿い、かつ自社の競争優位につながる政策を作り込んでいく。もちろん、その活動が行き過ぎると、現在の米国のように議会政治が立ち往生してしまう原因にもなってしまいますので、バランスが重要ですが。

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