桑島:「オールジャパン」という掛け声にしてもそうです。「日本人が一丸となって頑張ろう」というポジティブな論調もありますが、スポーツの世界ではともかく、ビジネスの実情にはそぐわないのではないでしょうか。何をするにしても日本のプレーヤーだけでやろうと言っているわけですから、外部から見たら非常に閉鎖的です。
たとえばスマートシティ構想にしても、電力会社をはじめメーカーも物流も、全部日本企業でそろえようとする傾向があります。本当は海外も含めて、その分野でいちばん優れたところと組めばいいわけです。でもそれをせずに日本企業だけで固めようとするから、世界標準になれず、結果としてガラケーのようなものを作ってしまう。
かつて日本企業が圧倒的な強みを持っていた、刷り合わせが競争優位をもたらす製品アーキテクチャーであれば別ですが、そのような状況はもはや少数になりつつあります。
「インIBM」でなく、「ウィズIBM」へ
バーンズ:これからのビジネスには、開放性や外の世界との協働が重要です。日本は“made in Japan”意識から脱却し、“made with Japan”という意識を持つ必要があるでしょう。IBMも、かつては“Made in IBM”という意識を持っていました。
でも今はオープンスタンダードを基本として協働する“Made with IBM”へと意識改革したのです。もはやIBMだけでビジネスができる時代は終わった。ビジネスにおいても、これからは開かれたエコシステム(Open-Ecosystem)の中で自社の競争優位、ポジションを考えなくてはなりません。
桑島:日本の製造業の中には、すべて自前でやろうとして失敗したところがたくさんありますね。
ワシントンに政策渉外部門を配置するIBM
バーンズ:ビジネスのプロセスの話をしましたが、政府の政策決定も同様に、外部に対して開かれたものであるべきです。そしてここに民間企業がアドボカシー(政策提言)をする機会があります。
桑島:政策の中には、どこまでオープンにすべきか、判断が難しいものもあるでしょうけれど。
バーンズ:それと同時に民間企業のほうも、政府が自社のビジネスに与える影響力の大きさを認識するべきです。政府はビジネスを規制する立場にあるのですから。
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