日本IBM新社長、「日米ルーツ」を活かせるか  今後問われる日本拠点の"存在感"

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1月から新社長に就任したポール与那嶺氏。どこまで経営手腕を発揮できるか

日本IBMは国内市場で存在感を発揮できるのか--。1月5日、同社は、副社長のポール与那嶺氏(57)が同日付で社長に昇格したと発表した。

与那嶺新社長はKPMGピートマーウィック、日立コンサルティングの社長などを経て、2010年に日本IBMに入社。2013年から副社長を務めて、営業部門で実績を挙げた。米国籍の日系3世で、父は元プロ野球選手の与那嶺要氏である。東京生まれで、米サンフランシスコ大を卒業後、公認会計士として米国でキャリアを積んだ。日米両国にルーツを持つ、豊かな国際感覚が持ち味だ。これまでも流暢な日本語と英語を操り、時に自ら足を運んでの営業活動で成果を上げるとともに、社内でも積極的なコミュニケーションを取り、マネジメントの役割を果たしてきた。

日本IBMは2013年度、売上高が8804億円(12年度比3.5%増)と、12年ぶりの増収を実現したが、ピークである2001年度の売上高1兆6268億円からはほぼ半減している。一方で、同期の営業利益は887億円(同8.1%減)と、3年連続の減少だ。2014年度決算はまだ発表されていないが、米IBMによると、日本法人の2014年7~9月期は減収となった。

米本社の経営関与が強くなっていった

前社長のマーティン・イェッター氏(55)は、ハード事業からサービス事業へのシフトを進めてきたが、現時点では道半ばだ。企業の間では、低コストでITサービスを受けられるクラウド・サービスへの移行が進んでおり、長く日本IBMが〝お家芸〟としてきた、高収益のメインフレームを軸にした情報システム構築の需要が細っていく状況は避けがたい。クラウドやモバイルなどの成長分野で強固な収益基盤を構築することが、喫緊の課題として与那嶺新社長に引き継がれる。

かつて日本IBMと言えば、日本に土着した外資系企業の代表格とされ、米国本社からの独立性も高かった。本社がコントロールを強める方針に舵を切ったのは、イェッター氏の就任以前に遡る。きっかけは、2005年に日本IBM社員による売上高の不正会計問題が発覚し、本社の2004年度決算の修正を余儀なくされたことだった。この事件をきっかけに本社が経営関与を強化し、同時に採算管理が厳しくなった。

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