日立、クラウド事業でアマゾンと組んだ理由 勝ち残るため、巨艦・日立なりの計算

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日立は自前路線にこだわらず、アマゾンと手を組む道を選んだ(写真は東原敏昭社長、14年8月)

日立製作所は10月から米アマゾン・ドット・コムのアマゾンウェブサービス(AWS)など、複数のクラウドを組み合わせて使う業界初の組み合わせ型のクラウドサービスを開始する。

同社ではこのサービスを「フェデレーテッド・クラウド」と呼んでいる。フェデレーテッドとは、「連ねた」「繋いだ」という意味。つまり複数のクラウドサービスを組み合わせたもの、という意味だ。

同サービスでは、顧客の「プライベートクラウド」、日立の「マネージドクラウド」、さらにアマゾンのアマゾンウェブサービス(AWS)など日立の提携相手の「パートナークラウド」、の3つを繋いで使用できる。顧客企業にとっては、3つのクラウドを一緒にすることによって、管理コストを削減でき、1つの画面であたかも1つのクラウドを利用しているかのように使えることを可能にした。

クラウドには大きく、顧客自身がサーバーを管理する”プライベートクラウド”と、委託先のデータセンター側で管理する”パブリッククラウド”の2種類ある。後者のパブリッククラウドの中でも、マネージドクラウドとは日立のデータセンターで管理するクラウドを言い、パートナークラウドとはAWSやマイクロソフトのMicrosoft Azureなど日立の提携先が運営するクラウドのことを指している。

自前にこだわらず提携も選択肢

日立のクラウド関連事業の売上高は2600億円(2013年度)で、2015年度までに5000億円と、約2倍にする目標を掲げている。クラウド事業のある情報・通信システム社の売上高は1兆9349億円(同)で、日立全体の約20%を占めるが、クラウド事業自体は、巨艦・日立の中で、決して規模が大きいとは言えない。そこに日立が自前路線から提携へと大きく舵を切った理由もある。

実際に日立が今まで注力してきたプライベートクラウドの年平均成長率は、2012~17年度で3%とほぼ横ばいを見込んでいる。一方、AWSが圧倒的シェアを持っているパブリッククラウドは、平均25%と伸びが急だ。現在、国内のクラウド市場では、まだプライベートクラウドが多いが、2017年度にはパブリックとプライベートクラウドの比率は半々になると見込まれる。

「(顧客にとって)味見ができる」――。日立の情報・通信システム社システム&サービス部門CEOの塩塚啓一氏は、パブリッククラウドの長所をそう例える。たとえば、低コストで素早く構築できるアマゾンのパートナークラウド(AWS)と、堅牢で信頼性の高い日立のマネージドクラウドとを、必要に応じて使い分けることができるからだ。事業が軌道に乗るまでAWSを使い、その後事業が本格化すれば、同一画面のまま、信頼性の高い日立製へと移行することも可能なのである。

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