ドル高円安はさらに15%進んでもおかしくない 地政学的な対立が進めばより深刻化する

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FRBのパウエル議長は、FOMCの金利決定を受けて記者会見を開催
米FRBのパウエル議長(写真:2022 Bloomberg Finance LP)

米ドルが大幅に上昇し、日本円とユーロは対ドルで二十数年ぶりの安値となっている。米国は40年ぶりの高インフレとなり、リーマン危機以来で最悪の貿易収支を記録しているが、それにもかかわらずドル高が進んでいるのだ。いったい何が起こっているのか。ドルは急落することになるのか。

為替相場の説明、ましてやその予測が極めて難しいことは認める。そのうえで、いま主要通貨の動きに影響を与えている要素は大きく4つあるように思われる。中でも重要なのは、米国になお金融引き締めの余地が残されていることだ。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ開始後も、米国経済は本物の景気後退とは程遠い状態にある。

欧州も米国同様の高インフレに見舞われているものの、欧州中央銀行(ECB)は引き締めに慎重だ。これは、ユーロ圏経済の見通しが米国よりも暗いことと関係している。利上げが巨額の政府債務を抱えたイタリアの財政に与える影響も懸念材料となる一方で、ECBは現在のようなペースのエネルギー価格高騰は続かないともみている。日本は中国と同じく、米欧のような高インフレには今のところ直面していない。日本銀行が近く引き締めに転じる可能性は低く、中国人民銀行は8月に利上げを行った。

日欧の地政学リスク

このドル高の背景には地政学的要因もある。ウクライナの戦争は米国以上に欧州で差し迫った脅威となっている。台湾に対する中国の不気味な威嚇行動は世界的なリスクだが、それがどこよりも色濃く影を落としているのは隣国の日本だ。よって欧州と日本は、景気がどう動こうが防衛能力を大幅増強せざるをえず、軍事支出も長期的に増大するとみられている。

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