ドル高円安はさらに15%進んでもおかしくない 地政学的な対立が進めばより深刻化する

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さらに、現在進行形で進む中国の景気減速が欧州と日本に及ぼすダメージも米国へのそれをはるかに上回る。中国経済の成長を鈍らせている根本要因としては、ゼロコロナ政策の都市封鎖、供給過剰という不動産市場の負の遺産、テクノロジー企業の弾圧、経済の行きすぎた中央統制といった問題が挙げられるが、これらが急速かつ持続的に修正される見込みはない。

最後に、エネルギー価格が高騰している中では、エネルギーを自給できる米国に対し、欧州と日本はエネルギーを大量に輸入しているという事実も、ドル高を後押しする要素となっている。

ドル高が反転する可能性は

現在のようなドル高は世界経済に重大な影響を及ぼす。世界貿易のかなりの割合(おそらく半分)はドル建てのため、ドル高は世界の大部分で輸入を縮小させる要因となる。その負の影響が統計的に有意なレベルとなることは研究から明らかとなっている。

新興・途上国経済が受ける打撃は過酷なものとなりかねない。というのも、こうした国々の企業や銀行が外国投資家から借り入れた債務は、基本的にすべてドル建てとなっているためだ。実際、幅広い国・地域の通貨に対するドルの価値を指数化した「広義のドル指数」は、新興国の中央銀行が自国通貨安を食い止めるべく先手で利上げに動いていなければ、もっとドル高に振れていたに違いない。もっとも、こうした利上げを行えば、国内経済は当然、圧迫される。

一方、米国がドル高で受ける傷は貿易相手国よりも短期的には軽く済む。貿易がほぼドル建てになっていることが、その理由だ。

では、このドル高が反転する可能性はあるのか。確かに、1980年代半ばと2000年代初頭には、ドル高が大きく進んだ後、一気にドル安に転じた前例がある。しかし、すでに述べたように為替レートの予測は難しいことで有名だ。ユーロと円が対ドルでさらに15%下落する展開は大いにありうるし、地政学的な対立がもう一段階深刻化すれば、その可能性はいっそう高まる。1つだけ確かにいえるのは、14年に始まった為替相場の異例の静止期間は過去のものになった、ということだ。

(C)Project Syndicate

ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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Kenneth Rogoff

1953年生まれ。1980年マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。1999年よりハーバード大学経済学部教授。国際金融分野の権威。2001〜03年にIMFのチーフエコノミストも務めた。チェスの天才としても名を馳せる。

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