中国にとって台湾はいかに重要か。ペロシ米下院議長の台湾訪問が大きなニュースとなったことで、世界はこの点に改めて気づかされた。
西側には、ペロシ氏の訪台は無謀な行動だったと考える論者もいる。台湾は民主主義と中国の未来にとって極めて重要な意味を持っているのに、彼らはそうした事実から目を背けているのだ。
西側の政策立案者らの間ではこのところ、権威主義的な政治文化が深く浸透した中国では非民主的な体制がこれからも続くとする見方が一般化している。西側の「個人主義」を中国の儒教的伝統の対極に位置づける立場だ。硬直的な上下関係は儒教的伝統の必然の帰結であり、それは家庭だけでなく、社会の隅々に及ぶ。ゆえに中国国民は、お上が定めた秩序に甘んじて従い、民主的な政治参加を求めることはない、とする理解である。
中国の過去2500年の歴史を見れば、このような説には根拠があると思われるかもしれない。中国では反乱が繰り返され、幾多の王朝が栄えては滅んだが、その間、民主主義が姿を現すことはなかった。そのため、強力な権力者が支配する上意下達の体制が今後も続くとする理屈が当然のように受け入れられており、中国当局もそうしたプロパガンダをせっせと広めている。
中国の新聞や政治評論家は膠着状態に陥った西側の政治を引き合いに出して自国の統治システムの優秀性を自慢、次のように指摘する。こうした効率的な権威主義体制は中国の価値体系や文化と親和性が高いものなのだ、と。
儒教=権威主義のウソ
本当にそうだろうか。香港と台湾は中国本土と同じ文化を共有しているが、依拠する政治体制は大きく異なる。2020年に中国共産党から弾圧されるまで、香港の民主主義は活気にあふれていた。その香港以上に本土との違いを浮き彫りにするのが台湾だ。1980年代以降、台湾の民主主義は幅広い政治参加によって力強い発展を見た。その民主主義は支配階級によって上からもたらされたものではない。これは、学生や一般市民が要求した下からの民主主義だ。
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