西側諸国が「民主台湾」を残した本当の理由とは 儒教は民主主義と相容れないという中国の欺瞞

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台湾における民主的な政治参加は近年、一段と強固になってきたように見える。台湾はデジタル民主主義の先駆けでもあり、社会のさまざまな層が活発に政治参加することが当たり前になっている。

そうなったのは、台湾の文化が「西側化」したからではない。00年に政権交代が起きるまで、台湾の圧倒的与党だった中国国民党は、儒教的な価値観をテコに使うことで自らの体制と本土の共産党体制の違いを際立たせてきた。後の調査からは、台湾では本土以上に儒教的な価値観が深く浸透していることが明らかとなっている。

要するに、文化的な価値体系と政治体制は切っても切れない関係にあると主張するのは間違っているということだ。

台湾が重要視される理由

孔子は「庶民が政治を論じることはない」と言う一方で「民、信なくば立たず」とも言った。政治は民衆の信頼なくして成り立つものではない、という意味だ。儒教思想は目上の者を敬い、これに従うことを勧めるものの、それは目上の者が徳を備えている限りにおいてである。徳なき統治者は入れ替えるべし──。そうした儒教的に非の打ちどころのない解釈が、台湾の民主主義を支えている。

だが中国共産党はこれとは対照的に、儒教の価値体系は民主主義とはどこまでも相いれないものであり、一党独裁以外の選択肢は存在しないと喧伝している。明らかに事実に反する主張だ。民主主義は台湾と同じく、中国でも成立しうる。

中国共産党がどれだけ大声でプロパガンダを発しようと、不当な扱いに異議を唱えたい、問題のある指導者を取り換えたい、という国民の欲求や願望をかき消すことはできない。台湾がこれだけ重要視されるのは、中国にもう1つの政治的道筋があることを体現する存在だからにほかならない。

(C)Project Syndicate

ダロン・アセモグル 米マサチューセッツ工科大学(MIT)教授

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Daron Acemoglu

マサチューセッツ工科大学(MIT)経済学部エリザベス&ジェイムズ・キリアン記念教授。T・W・シュルツ賞、シャーウィン・ローゼン賞、ジョン・フォン・ノイマン賞、ジョン・ベイツ・クラーク賞、アーウィン・プレイン・ネンマーズ経済学賞、2024年ノーベル経済学賞などを受賞。専門は政治経済学、経済発展と成長、人的資本理論、成長理論、イノベーション、サーチ理論、ネットワーク経済学、ラーニングなど。著書に『国家はなぜ衰退するのか』『自由の命運』(ともにジェイムズ・ロビンソンと共著)、『入門経済学』『ミクロ経済学』『マクロ経済学』(デヴィッド・レイブソン/ジョン・A・リストと共著)など。

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