気候変動と日本史の関係
過去の日本史において、温暖化・気候変動ということばや課題が、現代ほど身近にあったとは思えません。それでも気候変動の実体が、歴史上なかったはずはないでしょう。あったとすれば、どのような影響を及ぼしていたのでしょうか。
なかでも、われわれの来し方・日本史でどうだったのか、実はあまりよくわかっていないように思うのは、筆者だけでしょうか。近年はいわゆるグローバル・ヒストリーの観点から、環境や気候が歴史学の研究対象となり、関心も集まってきました。それでもまだ検討は緒に就いたばかり、体系的な史実の理解・叙述には至っていません。
そもそも史実に影響を及ぼす地球規模の気候変動は、日本の歴史だけをみていますと、わかりづらいように感じます。
日本列島は温暖湿潤で、すぐれて農耕に適した生態環境です。住民の社会的な分業は種々あったにせよ、その主たる生業が農業生産だったことは疑えません。そうした一元的な環境条件では、たとえ気象変動が発生しましても、社会経済的な史実では、おおむね作柄の豊凶や饑饉の有無に還元、包摂されてしまいます。それにともなって、政治の動きも単調にならざるをえません。かくて列島では、ヒトの歴史と気候変動の相関がよくみえなくなっているのです。
それでも日本史は、大きな時代の画期をたびたび迎えました。7世紀から8世紀の律令国家の形成、11世紀からの武家政権の勃興、16世紀以降の天下統一の達成など、やはりダイナミックな歴史です。そんな歴史の展開と気象の変動は、はたして関係していなかったのでしょうか。
その実地の、具体的で直接的な因果関係を論証するには、もちろん厳密な史料調査を通じた研究が欠かせません。ですがそれは、専門家の仕事です。アマチュアのわれわれは、むしろ大掴みな見通しを示し議論の足がかりをつくって、専門家の厳密な指導・批正を仰げるようにしておけばよいかと思います。
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